「おーい終わったよ。もしもーし」

 先ほど落としたものを拾い上げて終わったことを伝える。

「…お疲れ様です。また外しましたね。何度呼びかけたと思ってるんですか」

「ごめんって。思いっきり振りかぶったら飛んでったんだよ。ちゃんと終わらせたから、許して?」

「…まぁ無事ならいいです。長い通路があると思うんですけど、見えますか?」

「あぁあるよ」

「左に2重扉があるのでそこから地上に上がってきてください」

「了解。ありがとう」

 脱出経路を教えてもらったので、今まで着ていたビニール製の服をすべて脱ぎ捨てた。あぁ涼しい…いつも通り血だらけの現場にその服たちを脱ぎ捨て、包丁だけを拾って出口に向かう。途中で処理班たちにすれ違ったので軽く挨拶だけしておいた。

「お疲れ様です。無傷…ですね」

「無事に決まってんじゃん。早く帰ろうぜ」

 予定よりも大分早く終わったはずだ。早く帰らないとサクラが俺の家から帰ってしまう確率が上がってしまう。


「お疲れ様です~」

「…お疲れ。相変わらず早すぎるな。成功したみたいだし、約束通り好きな日に休み取れよ」

「っしゃ!!ありがとうございます!」

 喜ぶのもそこそこに、今日の報告に移った。ほとんどの音声が録音されてジョーさんの方に送られているので特に報告する必要はないのだが、俺がインカムをよく落とすせいで、把握できてないない内容がないかの確認作業が必要なのだ。

「…そんなとこっす。ついでに言うと、俺の柳の先が3ミリかけたことくらいがハプニングですかね。細いほうの柳も研ぎなおさないといけないですし」

「まぁ人数が人数だったからな。そりゃあ刃こぼれもするさ。お前今日飯は食ったのか?」

「まだ1食も食べてないんっすよ。彼女と食べるつもりだったんっすけど…」

「けど?」

 さっきサクラから送られてきたシフトを確認する時に、メッセージが入っていることにも気づいた。

”友達と夜ご飯食べてくるから、9時頃そっち戻るね~”

 一緒に食べられない事はかなりショックだったが、また戻ってきてくれるというだけで救われた。

「そういう事か。久しぶりにナカマ食堂へ行くつもりだったんだが、一緒に来るか?好きなもん食わせてやる」

「マジっすか?行きます!」

 まさかのお誘いに、俺のテンションは爆上がりした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る