「お前…何者なんだ。俺の撃った弾は何処に行ったんだ、」

「あ、ボスさんですか?さっきの銃弾なら半分にスライスしておきましたよ。そこらへんに…あ、あったあった。ほらっ」

 多分おそらく、この中で1番強いであろうでかい男が前に出て来た。床にある真っ2つにされた弾を投げ渡してやった。本当は切るつもりはなかったんだが、上手い具合に刃元に当たってスライスしてしまったのだ。

「ふざけてんのか!」

「あっぶねぇなぁ。ふざけてねえよこっちだって適当にやってるわけじゃないし、色々考えてるんですよ?まぁさっさと終わらせて帰りたいですけど」

「馬鹿だな。帰れることを前提でいるのか。ここで死ぬという運命を考えないのか」

 ボスの後ろにいた奴がこちらに向けて発砲したが、俺には当たらない。

「考えないよ。俺死なないし?勝つ気しかしない…⁉んなぁ⁉」

「…なんだよ」

 残っているターゲット6人が変なものを見るような目を向けてきているが、今の俺にそんなことはどうでもいい。

「…誰だ、俺の大事な包丁を折ったのは、」

「は?折れてねぇじゃねかよふざけんな」

「折れてんだよ!!この切先が3ミリ無くなってんだよ!」

「何わけわかんねぇこと言ってんだ。おいお前ら、さっさと終わらせろ」

 いつだ、弾を切っても欠けなかった刃がいつ…

 …許さねぇ。

「ぬぅぁ⁉うっ…」

「ぶほっ…⁉」

「…俺がおとなしく仕事を進めてやっていたのに、お前らのせいでイライラが止まんねぇんだけど」

 両サイドから襲ってきた2人に対して包丁を一振り。そのすぐ後に、ゴロゴロと、2つの頭が転がる音がした。

「…は、」

「…お、お前ら早くやれ!」

 発砲しながら回り込んできた奴の腹に包丁をスライドさせると、背骨の切れる感触が分かった。

「なにを、」

「今日はお前らに俺の予定をめちゃくちゃにされ続けてんだよ!せっかくの彼女とのイチャイチャタイムも…ぅらあ!!殺す人数多いせいで休日出勤だぞ!?ふざけんな!おまけに大事な包丁まで欠けたんだぞ!これ直すのにどんんだけ時間かかるか知ってるか!?おそこ逃げんな!」

 勝つ見込みがないと分かったのか、出口に向かって走り出した奴が2人いた。

 逃がすわけないだろ。

「ぐがっ…」

「……うっ、」

 隠し持っていたもう1つの細い柳包丁をダーツのように投げてまとめて串刺しにしておいた。振りかぶった時に、何かが転げ落ちる音がした気がする。

 残り2人。

「あんたたち、俺に帰れる前提でいるのかって聞いたけど残念だったね。俺はあと2分でここから帰るけど、あんたらは一生帰れねぇよ」

「はっ…なんだよお前…、こんなやつ今まで聞いたことねぇよ」

「そりゃそうじゃん。俺の仕事を見た奴はもう全員この世にはいない。噂されるまでもないって事」

 俺は、仕事を失敗しない。

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