カマスと殺し屋

 梅雨が近づいてきたこの季節。1日の気温の変化が激しくていやになる。1人なら冷房なんか付けないが、隣にいる人物の為に除湿のスイッチを入れる。

「ん~涼しい!ありがと~」

「これで抱き着いても嫌がんなよ」

「ぐっ…あんたほんと筋肉どうにかなんないの、」

「仕事に必要だからしょうがないだろ。ないよりいいと思え」

 あぁ良い朝だ。冷えた寝室のベッドの上で彼女を抱きしめながらだらだら過ごすなんて、最高の休日だ。ここ最近忙しかったから、こんなにのんびりと過ごす朝は実に1カ月ぶり。

「…変態どこ触ってんのよ」

「体の一部。良いだろ別に!久しぶりに会えた彼女の身体触るなっている方がおかしいだろ。嫌なの?」

「…別に、良いけど」

 このまま2度寝でもして、昼頃に起きてご飯を食べる。そんな風に今日の予定を考えていたのだが…

「ラオ、携帯鳴ってない?」

「…鳴ってねぇ」

「鳴ってるよね?」

「……」

「私出ようか?」

「んぁもう出るって…!はい、もしもし」

 こうやって突然電話がかかってくるという事は、だいたい…

「あぁ休みの日に悪いなラオ」

「おはようございますジョーさん。本当ですよ!いま彼女とイチャイチャしようと…っ痛ぇ!」

 隣にいた彼女からのグーパンチを食らってしまった。小声で上司相手にそんなこと説明すんなって付け加えながら。

「ごめんごめん。そうだろうとは思ってたけど、仕事なんだ。どれくらいで来れる?」

「…4時間」

「無理だ1時間半で来い。成功したら1カ月間彼女の休みに合わせて休み取らせてやるから」

「…それは魅力的っすね。1時間半で行きます」

「よろしく」

 休日出勤なんて全然乗り気じゃないが、彼女との休みを合わせられるオプション付けてくれるなんて言われたらやるしかねぇな。

「今から仕事?大変ね、優秀な殺し屋さんは」

「別に優秀じゃないって。ただ仕事してるだけだし?サクラ今月の休みもう決まってんの?」

「決まってるけど…」

「じゃあ後でその日付全部携帯に送っといて」

「え?良いけど…ちょっとバカ変態!さっさと仕事に行く準備しなさいよ!」

「1時間半で行けば良いし、30分でこっから着くし。1時間くらいイチャイチャしても…痛ぇっ!」

「早く行け」


 休日出勤に、イチャつき妨害。おまけに彼女から早く行けってベッドから突き落とされる始末。


 …今日のターゲット、覚えておけよ。

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