「お待たせしました~。本日は鯛づくし御前です。左からタイのポワレと焼き春野菜、天然鯛の湯引き、新じゃがとタケノコの炊き合わせ、鯛茶漬けです。茶漬けは最初はそのままごま醤油の味で召し上がっていただいて、次に薬味を入れて、最後はこちらの土瓶にだしが入っていますので、お好みでかけて食べてみてください」
「うっわ美味そう」
「やばいですね、いただきます」
本日もたくさんの種類を少しづつ。最高だ。隣に座る殺し屋も、美味しそうな料理を目の前して顔が緩んでいる。もしこの隙を狙って襲ったとしても勝てる気はしないけどね。
「コウさん、この鯛のポワレ凄いよ?レモンソースが旨すぎる」
「…めちゃくちゃ美味いですね。どうやったら皮目をこんなにパリパリに焼けるんだ…?身はふわっふわなのに…」
多分、俺が真似して作ってもこうはならない。身をふっくらさせようとすればするほど皮がへたってしまう。
「天鯛の湯引きか…初めて食べましたけど、食感が良いですね」
「確かに美味い。天然の鯛って脂が少ないイメージだったけど、十分あるもんなんだな」
いつもナカマ食堂には1人で来るので、大将以外と話す機会がない。でもこうやって料理の感想を言い合いながら食べるのも中々いいもんだな。相手殺し屋だけど。
「んん!茶漬けは問答無用で美味い!俺わさび好きだから、いつも入れすぎちゃうんだよなぁ」
「ははっ、確かに入れすぎですね…身も活かっててコリコリだ、」
俺の中での鯛茶漬けの醍醐味は、アツアツの出汁に溶けたわさびの香りと、表面だけ軽く火の通った鯛だ。俺もわさびは好きなので、薬味のすべてが混ざり合った出汁と一緒に米と鯛を啜るのが最高に美味い。
「大将、今日も最高です」
「ありがとうございます」
言っていた通り食事をご馳走してもらい、美味い飯を旨く食べられて満足だ…まぁ、しばらく嘘をつかないといけないので、そのための偽の証拠づくりに専念しなくちゃいけないのは胃が痛くなりそうだけど。
お店を出て地下道を歩く…あ、そういや今日はしぐれ煮を食べそびれてしまった。あのしぐれにはナカマ食堂へ行くときは必ず食べていたのだが、今日は鯛が旨かったからそれでいいか。
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