「いいか、ただ殺すだけでいいならナイフを使う必要はないんだ。例えばこの裁縫用の針。頸動脈をきっちりと狙えばこれだけで息の根を止めることが出来る。だからやみくもに殺しをするんじゃなくて、一番リスクが少なくスマートにできる方法をとることが大切なんだ。よく見ておけよ、ただしここから一歩も動くな」
「分かりました」
翌週、ある仕事と並行してて部下の教育を行っていた。今回の依頼はただ殺すだけでよかったので、見本がてらに一番スマートな仕事をすることにした。誰かにバレる事さえなければ特に危ない仕事でもなかったので、見学の部下が近くにいても問題はない。足音と気配は殺し屋にとっての命綱であり命取りでもあるため、これを習得しなければまず仕事ができないかなら。
そっと陰から出てターゲットに近づく。素早く口を塞ぎ、手足の動きを封じ込めて、部下であるシンに先ほど説明をしていた通りに裁縫用の針を首元に突き刺す。少し針先を左右に揺らしてから、血しぶきをまともに受けないようにターゲットの身体を振り落として何事もなかったかのようにその場を去った。声もなく血が地面に打つ音だけが耳に届く。奴はどう頑張っても生きていることはないだろう。今回も成功した。
「もう出て来て良いぞ。俺の10メートル以上後ろを歩いて帰ってこい」
携帯で静かに部下に連絡を取り、栄えた町の影を歩いて帰る。指定していた地下に入ったところで待ち合わせをしていたので、そこで落ち合った。
「初めてマツさんの仕事見させてもらいましたけど、凄いですね…先輩たちがあの人はレベルが違うという理由が分かりました」
「そうか?うちのメンバーは皆優秀だぞ、かなり信用のできる奴らだし」
「それはそうなんですけど…なんか、動きに無駄がないというか…あまりにもスマートっていう言葉そのままだったので驚きました。瞬きする間もなかった…」
「ははっ。まぁ、経験だよ経験。俺だって初めの仕事からこんな手際なわけじゃないし、妥協せずに数をこなしていけば誰だってできるようになるさ」
「そういうものなんですね」
「あぁそういうものだ。…なぁシン、腹減らないか?」
「めっちゃ減ってますよ、もう22時ですから」
「じゃあ飯食いに行くか?」
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