四章:考察

【淡海連続不審死事件調査報告:追記】

服部ハットリ事件

 ※※※※年四月二十日九時頃、服部アキカズ(64)が淡海府南区にある心療内科・けいろんクリニックにて栄養剤による点滴療法の際に突然容態が悪化して、そのまま死亡した。輸液パックには消毒液で使われる塩化ベンザルコニウムが検出され、これが死因と考えられる。

 ヘルスケア・シリアルキラーの事件を教訓に厳重なチェック体制を病院側は守っており、院内のカメラ映像からも担当看護師含む医療スタッフや従業員、その他同時間に居合わせた患者からも不審な動きは確認できなかった。病院・スタッフの評価においても良好なもので留意する点はない。

 栄養剤の輸液パックは鍵付きの保管庫に収納されており、使用前に箱から初めて開封され、そこに二人のスタッフの立ち合いと担当医師のチェックもなされている。犯行に使われたとされる消毒液は院内の複数個所に設置されており、誰もが使える状況であった。輸液パック上部に注射痕のような穴が発見されたことから点滴開始後に混入されたものだと考えられる。

 被害者の服部は昔から工事現場の日雇い労働で収入を得ていたが、五年前に就労中の現場で資材の落下事故に遭遇してから強迫性神経障害を起こし労働継続が困難と判断され、就労継続支援の作業所にて働くことになる。二年前から始めた点滴療法のおかげかは不明だが、ここ最近は体調が落ち着いて生活できていたという。倹約な暮らしをしており、金銭面にトラブルはなし。人間関係も作業所と病院以外には見られず、それも必要最低限な会話をする程度であったという。

 極度に犯行実行が困難な点から、本件も連続不審死事件と関連性のあるものと見て調査を開始する。ちなみに服部も先の事件被害者たちと接点はない。

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