第24話

 街を出たところで、アイリスとロゼ、そして俺でシロの背中に乗った。

 ロゼが……甘えん坊になってしまっているロゼが俺の前を譲ろうとしなかったから、順番は前からロゼ、俺、アイリスだ。

 ……いくら冷静スキルを持っていて冷静な俺でも思った。……うん。なんで?


 公爵令嬢相手にロゼの態度も失礼だと思ったけど、それはアイリス本人が「これからはもう一緒にいるんだし、いいわよ」と言ってくれたから、もう別にいいとして、俺が真ん中なのはなんでなんだよ。

 確かに背の高さ的にロゼの前にアイリスってのもおかしいかもしれないけど、俺の後ろにアイリスも背の高さ的におかしくないか?

 こんなことなら、無理やりにでもロゼを説得して後ろに行ってもらえば良かったかもしれない。

 ……あんまりこういうことを思うのは失礼かもだけど、ロゼより少し大きめの胸が背中に当たって意識せずにはいられないんだよ。

 相手は公爵令嬢だし、冷静スキルがあるし、顔には出さないけどさ。


「……ん」


 更に意識を逸らすために、俺はロゼの頭を撫でることにした。

 ……いつも通り耳を俺に当ててきてるから、撫でて欲しいのかと思って、っていうのもある。


「ねぇ、これはどこへ向かっているのか聞いてもいいの?」


 そうしていると、何故か後ろにいたアイリスが落ちないように俺の腰に回している腕の力を強くしつつ、そう聞いてきた。

 ……別に痛くは無いけど、更に体が密着したような気がして、俺、公爵様に殺されないか心配なんだけど。


「……正直、俺……私はこの辺の地形に詳しい訳では無いので、適当です」


 状況が状況だからつい素の俺が出てきそうになったけど、なんとか誤魔化せたと思う。

 ……冷静スキルはちゃんと仕事をしてくれているはずなんだがな。

 

「そう。だったら、どこかの街にでも着いたら私が案内してあげるわよ」


 俺の行き当たりばったりな所にこんな奴には着いていけないと言ってくれれば良かったんだけど、公爵様も納得して出てきている訳だし、そう上手くはいかないよな。

 ……今更アイリスが着いてくることに何かを思っても仕方ないし、もう何も思わないようにしよう。


 それよりも、別に今から街の場所だったりそこの特徴だったりを教えてくれる訳では無いんだな。

 ……どうせ聞いたって相当そこの治安が悪くない限り、俺は今進んでいる方向に行くだろうし、別にいいか。


 アイリスの当たっているものを意識しないように今は別のことを考えよう。

 ……今更だけど、今頃ノルド達はどうしてるんだろうな。

 まだあんまり時間は経ってないけど、公爵様はもう動きだしてるだろうし、破滅に向かって行ってるのかな。

 ……驚く程に興味が湧かないな。

 別にアイツらがどうなろうと俺にとっては本当に興味が無い。

 強いて言うなら、ロイドが今の俺の様子を見たら悔しがるだろうな。

 ロイドはアイリスに惚れてたっぽかったし。

 どうでもいいけど。

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女の子にモテたいと願ったら転生特典として【魅了】スキルを貰ったから可愛い女の子……ではなく、魔物に使おうと思う シャルねる @neru3656

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