第7話 初工賃
今日初めての工賃が出た。そのわずかな金額で、一ヶ月の生活だと聞いて、あたしは呆然となった。できない。あたしは大のコーヒー党で、コーヒーを最低一日二杯飲む。前は自分でインスタントコーヒーと、砂糖を買って来ていたので、何とか保たせられたけれど、今はそれができない。どこに何が売っているのか、どこにどんな店があるのか、まるで解らないからだ。
まして手紙を書くとなれば、コンビニに行って、切手を買わなければならない。切っても高くなっていて、もう一つがタバコだ。計算したところでは、付きで六箱。それが今月の個数だ。
あとは我慢しなければならない。だけど忍耐強くはない。計算して、吸っていくことができれば、何とかなるだろうけど。
自分で我慢できないから、小遣いが増えた前のところとは違って、ここでは歴然と金額が決まっている。それで買えるだけしか、たばこは喫えない。ヘビースモーカーを自認しているあたしとしては、これは厳しい。
でも仕方がない。今日貰った工賃は、わずか半月働いただけの金額。それで一ヶ月暮らすのだ。そう考えたら、少しは忍耐を憶えるのに、いい経験かも知れない。
そう前向きに考えて、だけどコーヒーが飲めないのは痛い。何とか考えて、行かないとならない。でもすぐには思いつかなかった。
そんなあたしにお構いなく、日常は過ぎていく。だからこそ、今日から少しずつ考え方を変えていなかければ。そう思うけど、今までタバコは自由に喫えたあたしだ。そこが意識改革が必要だろう。
そう思って、顔を上げて行こう。コーヒーは工夫すれば、何とかなるはずだ。そうするしかない。あとはタバコの本数だ。一箱二十本。それを二日か三日に分けて、一箱喫うしかない。
あとは対策としては、一時間に一本喫っていたのを、二時間とか、一息つきたい時に数しかない。切れるよりはマシだ。そう思うけど、明日は日曜日だ。お風呂に入ったら、絶対にすいたくなる。それは確かだった。
もう一度自由に喫えるまでは、我慢するしかない。いずれはそれが普通になるかも知れない。だから今は何とか自由になるお金が、手に入ったことを、ここに報告しよう。それで今日は終わりだ。
長い夜の始まり @kanaisaki
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