第3話 戦う理由

 私とホープ、グリムの三名は早速廃工場に向かっていた。廃墟が広がる乾燥した場所を歩いていた。


「ここら辺からアンドロイドの失踪が頻発している場所だから、油断しないで」


「はい、はーい」


 ホープが緊張感のない返事をした。


「MT殿、ここはどう言った場所だったのですか?」


「ここは、かつて魔導兵器が製造されていた場所。動いていないはずだけど、今でも比較的多くの魔導兵器が潜んでいる」


「なるほど、だから魔力感知の妨害が偽装されているのか……」


 「妨害の偽装」この言葉を聞いた途端背筋が凍った。私とホープは警戒体制に入った。私はライフル、ホープは剣を構えた。


「そんなに危ない場所なのか?」


 グリムはこの場所の危険さを知らないから仕方ない。しかし、偽装の事は早めに言ってほしかった。


「遅かった……」


 廃墟の陰から2メートル前後のサソリ型の魔導兵器が周辺のそこかしこから、現れた。


「MT殿、ホープ殿、ここは我に任せてもらえぬか?」


「何か妙案が?」


 グリムが前に出た。その時にグリムのマントの隙間から、尻尾の用な物が見えた。それは爬虫類の鱗用な質感で、先の方には刃物状のブレードが付いている。


「魔力制限解除」


 グリムがそう言うと、魔力による大きな気配がその場所に広がった。魔導兵器が一斉にグリムに向かって跳びかかった。しかし、グリムに近づいた魔導兵器は金属音と供に、真っ二つになって地面に転がった。


「えっ!」


 私とホープは目を疑った。尻尾を鞭のように振っているのだ。それも、アンドロイドがやっと目で追える速度で。360度から襲い掛かってくる魔導兵器を一匹も取りこぼすことなく、切り裂いている。これが、長年の戦争を生き抜いた技量の一つ。


 グリムの足元には大量の魔導兵器の残骸が転がっている。グリムは敵がいない事を確認して魔力制限をした。


「確かに危険な場所だな。油断して悪かった」


「いえ、いえ。グリムさんほどの実力があれば殆どの敵は何とかなりますね。僕も強くなりたいです!」


 ホープは目を輝かせいる。


「グリムさん、魔力感知妨害の偽装の元凶は工場内と推測」


「本番はこれからということか……。腕の見せ所だな」


 グリムはそう言うと、先陣を切って歩き出した。



 工場に近づくにつれ、魔導兵器が増えるという事も無く入り口に着いた。消耗しない事は良いことだが、不自然にも程がある。この工場の中に何かあるのだろうか。


「魔力感知の妨害が一段と強くなった。使用不可」


「それは厄介ですね……。グリムさんはどうですか?」


「我も魔力感知の維持が難しい。不意打ちに気をつけながら進むしかなさそうだな」


 グリムはそう言うと、工場の中に足を踏み入れた。中は薄暗く、外と違い少しじめじめしている。


 薄暗い通路の先から、ゆっくりとこちらに進んでくる足音が聞こえる。私たちは物陰に隠れた。


 音の主が見える範囲に来た。音の正体は変わり果てたアンドロイドだった。皮膚は無く、鉄のボディーがむき出しになり、あちこちから火花が出ている。


「何ですか……、これ……」


 ホープが震える声で目の前にある光景に震えている。


「グリムさん、アンドロイドは首を斬れば止まる。頼んでも?」


「分かった」


 グリムは私の言うとおりに、首を狙った。足音を立てずに、すれ違いざまに尻尾のブレードで切り落とした。


 アンドロイドの死体を触った。


「改造されている。それも、かなり雑に……」


「この辺り周辺で、失踪したアンドロイドは改造されていたのか」


 改造されたアンドロイドの分析を始めた。


「MTは……、MTは何も感じないんですか!仲間が!こんな、無惨な状態で……」


 ホープが感情的に訴えてきた。ホープに近づき、胸ぐらをつかんだ。


「その程度の意思で戦っていたの。この程度の地獄で悲鳴を上げるの。戦う意思が無いなら、ここで待っていなさい」


 私だって胸くそ悪い。ホープの胸ぐらを離して、前に進もうとした。


「MTは何のために戦っているんですか……。終わらない戦いだと、僕より分かっているなら答えてください……」


「仲間のため。人間のためなんかじゃない。死んだ仲間に託された、守ってくれた命を使って、死んだ友の分まで戦っているだけ。ホープは製造されてから日が浅い。何のために戦うか決めなさい」


「戦う理由……」


「自分なりの答えを自分で考えなさい」


 ホープは涙を拭い、歯を食いしばった。


「僕は……、僕はMTの背中を守るために戦います」

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