ラクトゥーカ・オートマタ

第４話 人形遣い

ホープの戦う意思がある事を確認して、再び前に進み始めた。その後も何体かの改造されたアンドロイドを倒しながら進んだ。そして、開けた場所に着いた。

｢燃料タンクの部屋か……。タンクは殆ど持ち出されてるな｣

　天井からいくつもの鎖がぶら下がっている。殺伐とした雰囲気が恐怖心を引き立たせる。

｢ここから、魔力感知の妨害が……｣

　突然、高い天井から5メートルほどの何かが落ちてきた。砂ぼこりが舞う中、蜘蛛のようなシルエットが見える。しかし、背中に何か大量のものを乗せている。私たちはそのおぞましい姿に唖然とした。蜘蛛型の魔導兵器の上に改造されたアンドロイドが山のように積み重なっている。

｢危険個体と推測。気を抜いたら死ぬ｣

　武器を構えた。広い場所とは言え、既に大量のアンドロイドを手駒にしている。おそらく短期決戦で無ければこちら側が不利になる。

　魔導兵器が改造アンドロイドを一斉にこちらに突撃させてきた。

｢エナジーライフル・パワーモード、狙撃！｣

　ライフルのスコープを覗いて、引き金を引いた。銃弾が改造アンドロイドの集団に当たり爆発した。しかし、それ程の威力は無く、アンドロイド達は再び立ち上がろうとしている。

｢援護は任せて。二人は魔導兵器を｣

｢了解です｣

　ホープが改造アンドロイドを避けながら、魔導兵器の元に一直線で走り抜けている。グリムは大剣ですれ違いざまに改造アンドロイドを斬りふせながら進んでいる。その様子に気づいた魔導兵器は天井からぶら下がった鎖に登り始めた。

｢待てー！｣

　ホープが追いついて鎖に触れた時、上から音がした。

｢ホープ殿！罠だ！｣

　グリムが叫んだと同時に、上から鉄球が落ちてきた。ホープは避けようとしたが、足が動かない。床に粘着物質がばら撒かれている。

　グリムが追いついて、大剣で鉄球をぶった切った。

｢オラァーー！｣

　鉄球は真っ二つになり、ホープの上には落ちなかった。

｢物質分解｣

　グリムが呪文を唱えると、粘着物質が液体になって地面に吸われた。

｢御手数おかけします｣

　私は二人の様子を見つつ、改造アンドロイドを確実に減らしていた。そして、鎖に照準を合わせた。

｢電気ショック弾、発射！｣

　弾丸が鎖に直撃した。鎖を伝って電気が流れた。一瞬天井全体が光ったと同時に、魔導兵器が落ちてきた。

｢今だ！｣

　ホープとグリムが同時に攻撃を仕掛けた。金属音がすると、改造アンドロイドが止まっていた。魔導兵器の頭部に傷を負わせた。

　しかし傷は浅く、決定打にはなっていない。魔導兵器が再び動き出して、前足を上げて威嚇をしてきた。すると、さらに天井から改造アンドロイドが降ってきて、戦場は混乱する。殆どの改造アンドロイドがグリムに群がった。

｢何のこれしき……。ホープ殿！本体の相手を！｣

｢任せてください！｣

　ホープが改造アンドロイドを掻い潜って、魔導兵器に攻撃を仕掛けようとするが、逃げ足が速い。

｢あれ……、まさか……！｣

　ホープの嫌な予感が的中した。魔導兵器は逃げているふりをして、私を狙っているのだ。改造アンドロイドを踏み潰しなが、一直線に走っている。踏み潰す度に金属が工場に響く。

｢MT！｣

　ホープが叫んだ。魔法の準備をして、床に魔方陣を展開した。ライフルの照準を合わせる。魔導兵器が近くに来たとき、魔法を発動した。

｢エナジーショット・ノアール｣

　引き金に力を入れる。黒い弾丸が魔導兵器を吹き飛ばした。ひっくり返った魔導兵器は一時的に動けなくなっている。

　その時、改造アンドロイドの相手が終わったグリムが、3メートルぐらいある燃料タンクを魔導兵器に投げつけた。激しく爆発したと同時に、改造アンドロイドの動きが完全に止まった。焦げたねんりょうの匂いが鼻をついた。

｢これで、終わりですね……｣

　ホープは座り込むと、黒焦げた魔導兵器から音がしている事に気づいた。近づいて耳を澄ますと、言葉だと分かった。

｢アソ…ボ、アソボーヨ……｣

｢何言っているんだ……｣

　動揺したホープを横目にグリムは魔導兵器にとどめを刺した。

｢ホープ殿、気にしてはならぬ。こやつらの言葉は偽物だ｣

　私は走って、二人と合流した。

｢二人とも怪我は無い？｣

｢大丈夫だ｣

｢………｣

　ホープは無言で魔導兵器の残骸を見ている。

｢大丈夫？｣

　ホープの顔を覗き込んだ。

｢えっ…、あっ……、大丈夫ですよ｣

　動揺した様子のホープが心配になったのでさらに顔を近づけた。

｢わっ！何ですか……。僕は大丈夫ですよ！｣

　ホープは頬を赤らめて答えた。

｢分かった。グリムさんの記憶を探そう｣

　切り替えて周りを魔力感知でのスキャンを始めた。妨害は魔導兵器の危険個体を倒したことで、問題なく行えた。