随筆
エッセイを書くのは怖い。
そもそも私の場合、自分の話をするのが怖いから、小説やら詩やらを書くようになったわけで。
脚色や比喩をふんだんに使って伝えられる他の表現方法と違って、自分の記憶や感情をありのまま言葉に乗せる、エッセイ。ノンフィクション。随筆。
べつに批判されることが怖いのではない。
それは他の表現方法でも同じことだし。
ただ、ありのままを話すのが怖い。自分の話をするのが怖い。そう感じる。
自分の心のうちを知られるのが怖い。
今こうして怖い怖いと話しているのだって怖い。
この恐怖は恥なのだろうか。
たとえば、誰にも見せるつもりのなかった日記帳を覗かれるのは怖いものだけど、その「怖い」の中にはいくぶんか「恥ずかしい」という気持ちも混ざっているように思う。
それと同じことで、見せるつもりのなかった心を覗かれるのが恥ずかしいと感じているのかも。
まあ、趣味を知られるのだって怖いし、嫌なことを嫌だと言うのだって怖いから、根っこのところで自己開示そのものに怯えているのだろうな。
それでも書いてしまうのは、語ってしまうのは、何かを残したいと思ってしまうのは、承認欲求という当たり前の欲求なのか、なにか別の、私だけの醜い感情なのか。
とにかく、残さねばと思う。
それが非難の種になるのなら、それはそれで良いと思う。
この「残さねば」という気持ちは、言葉にできるものではないし、誰かに正しく伝わるものだとも思えないけれど、もしかしたら、この世の全ての人が同じ思いを抱えて生きているのかもしれない。
という数百字でさえ、自分の考えたこと、感じたことを、ありのまま言葉にするのは、吐き気がするほど怖かった。
可惜夜のはやにえ 徒文 @adahumi
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