第35話 大会前の試合6
くっ!
今のゴールを相手に許したのはキツイ!
実際問題としてさっきの攻めは悪くない。
むしろ、勝っていた。
単純に個人の能力による差が出た結果だ。
千葉先輩には悪いけど、それが事実である。
時間は3分を切ったか。
点差は15-18、3点差で負けている。
ここから逆点するにはちょっと厳しいが勝ち筋作り、負け筋を作らない事がガードの仕事である。
3点差がついてる以上、相手にスリーポイントを決められるのは論外。
2点でも厳しくなる。
うちのチームにはスリーポイントシューターはいない。
攻めに関しては2点ずつ確実に取っていきたい。
問題はディフェンスだ。
前川先生が中山先輩を完璧に抑えているのは良い。
龍也と星野先輩の1対1も良い勝負をしてる。
ただ、龍也が抜かれた時の千葉先輩とポール(北野)先輩のカバーが遅い。
そこをどうにかしないと。
僕が行くか?
竹内先輩をフリーにできる?
いや、無理だな。
やはり前から圧力をかけて少しでも竹内先輩がパスを出しにくくするしかないか。
星野先輩は龍也に勝ってもらうしかないか。
龍也任せで草、勝ち筋もクソもないなw
今はとにかく点を取る。
あと、ガードの仕事はきっちりしよう。
「残り、3分切りました!この1本取りましょう!声出して!パス回していきましょう!」
声を出しながら人差し指を天に掲げ、クルクルと回す。前世からやっていた僕なりのパスを回すジェスチャーである。
「おう!」
「了解」
「うん、頑張ろう!」
よし!声も出てきた。
前川先生が大木先輩にダウンスクリーンにいく。
千葉先輩が45°に上がる。
千葉先輩にパスを送る。
マークマンをチェンジした中山先輩が千葉先輩に圧をかける。
たまらず僕に返す。
ボールキープしながら、周りを視る。
ん?
前川先生が何かやろうとしてるな。
視点の端で注視しながらタイミングを窺う。
前川先生が裏から飯田先輩にスクリーンをかけにいく。
飯田先輩にスクリーンがかかり、ポール先輩が逆サイドに流れていく。
前川先生はさらにローポストから45°の星野先輩にアップスクリーンをかける。
なるほど。この
スクリーンだけで相手を崩せるのを見せてもらえて勉強になった。
星野先輩は裏からかけられるスクリーンに対応できず完璧にかかってしまう。
龍也が中にキレこむ。
そこにこの日1番の僕のパスがささる!
先輩たちのチームは誰も反応できず、ノーマークの龍也にパスが入る。
危なげなくレイアップシュートで得点を重ねる。
「ナイス!」
よし!17対18!
次、止めれば逆転の芽はあるぞ!
「まだ負けてないぞ!パスくれ!」
「分かってるよ。パス出すから決めろよ!」
竹内先輩がボールを運び、中山先輩にパスを送る。
が、前川先生の圧が強く、スリーポイントもまともに射たせないと言ったディフェンス。
たまらず、竹内先輩にパスを戻そうとする。
ここだ!
一瞬の隙をつき、一歩を踏み出す。
前川先生の圧で中山先輩は不用意に雑にパスを戻す。
完璧なタイミングでスティール。
先輩チームとしてはやってはいけないミス。
逆にこっちとしては勝ち筋が見えてくる。
単独スティールで逆転に成功する。
残り2分ちょっとか。
先輩達は少し焦りが見えてきたな。
僕はこのまま竹内先輩に圧をかけて少しでもパスを出しづらくしよう。
焦ってはいるがこの1本が大事なのはさすがに分かってるのか慎重に攻めてくる。
先輩達がパスを回し、中山先輩にパスが入る。
「このシュートで逆転してやる!」
シュートをしにいくものの射ちづらい体勢、射ちづらいタイミング、外れてないマークマン(前川先生)。
(早い…)
「まだだ!まだ射つな!」
僕は心の中で思い、竹内先輩は口に出して言った。
シュートクロックは12秒ほど残っている。
残り時間を考えても慌てて射つようなタイミングでもない。
だが、無理くりシュートにいってしまった。
ガンっ!
案の定、シュートはリングに弾き返されてしまう。
「リバウンド!!」
ポール先輩はガッチリと抑えるが、千葉先輩は大木先輩を抑えてきれていない。
ボールが落ちる先に千葉先輩と大木先輩が待ち構えている。
まずい!このままだと、大木先輩がリバウンドを取ってしまう。
僕もゴール下に行かないと。
僕がその判断するのとほぼ同時に大木先輩がリバウンドを取りにいく。
それほど大きい印象ではないのだけど予想を裏切る高さがある。
多分だけども大木先輩はすぐにシュートを打ちにいくために意識はゴールに集中していたのだと思う。
誰でも着地の反動で若干ボールを下げるものである。
そこを狙う。
空中でキャッチして着地する。
「大木!
その声を聞く間もなくボール強引に掠め取る。
「な!?ちくしょう!」
「前!走れ!!」
ボールを取ってすぐに前を向き状況を確認する。
前にはすでに龍也が走っている。が、竹内先輩がそこをケアしている。
星野先輩も戻っているな。
速攻は無理か。
ん?後ろか?
先ほどボールを奪われた大木先輩が後ろからプレッシャーをかけてくる。
気がつければ、咄嗟の判断でボールはキープできる。
フロントチェンジ……レッグスルー……オフハンドでのガード。
僕のできる技術を駆使して様子を見る。
だが、ここぞとばかりにプレッシャーをかけてくる大木先輩。
身長差、リーチの差を活かしてボールを取り返そうとする。
脚力もあり、やや厄介ではあるがやれないこともない。
大木先輩と対峙する。
フロントチェンジからシフティ(上半身だけでフェイクする)で揺さぶりをかける。
右に行くと見せて左に行く。
さすが大木先輩。
右から左へとどちらも反応してくる。
そうなると今度は僕が危うい立場になる。
8秒ルール、僕の体内時計では今6秒くらい進んでいる。
様子見はできない。
左に反応している大木先輩の股の下にボールを通す。
一瞬面食らう大木先輩。
硬直した一瞬をつき、右から一気に抜き去る。
危なかった。
「大木!一旦戻れ!」
「ちっ!はい!」
僕も声を飛ばす。
「さぁ!この1本取って突き放しに行きましょう!」
生まれ変わってひたすらバスケが上手くなるように生きてみた~何故か、前世の知識が残っていたので知識を武器にバスケで無双する~ 縁側のカレー @harumania01
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