第34話 大会前の試合5
いい感じで決めれたな。
よし。ディフェンスだぞ!
竹内先輩相手なら良い練習になりそうだな。
なんせ、今まで相手にした事ないタイプのドリブラーだからな。
今まで僕は予測をしてディフェンスしていた。
上手いディフェンスをする人は予測を立てて、一歩目を速くする事によって、オフェンスについていくことができるのである。
でも、竹内先輩はその予測が通じない。
経験した事のない相手だからである。
オールコートでついているとはいえ、僕も少し引き気味に構えていた。
予測が立てれない相手にはどうしても後手に回ってしまう。
そのせいで一歩目が遅くなってしまうのでその誤差を埋めるために間合いをあけなければならない。
でも、少しずつだが慣れてきた。
体も温まってきたし、さっきより反応できるな。
前から圧をかけにいかないとこの試合は負けるかもしれない。
中山先輩は前川先生に任せて、前に出るしかない。
今日竹内先輩とは何度目の対面か。
絶対の余裕を見せる竹内先輩に少しでも圧をかけて焦らせれるのが僕の仕事だな。
と言う事で、間合いを詰める。
1つでも間違えれば、一気に抜かれる距離。
間合いを詰めた事でより一層増すリスクと緊張感。
竹内先輩は前にも増して警戒感が上がる。
背中越しにこっちの様子を伺っている。
さっきより少し余裕がない?
そんなことはなかった。
しっかりと身長差を活かしてガードドリブルで確実にボールを運ぶ。
余裕があるのは基本がしっかりしているからなのか。納得である。
ボールをトップまで運ばれる。
竹内先輩は常に周りを見ている。
周りを見ながら、一歩後ろに下がる。
バックターンのステップと同時にフロントチェンジで前を向く。
一瞬だが、間合いが
くっ!やられた。
このタイミングで焦って間合いを詰めれば一気に抜かれるだろう。
間合いは詰められない。
間合いが
仕方ない、後手には回るがこのままディフェンスするしかないか。
視界の端では中山先輩にピッタリくっついてる前川先生が視えた。
前川先生はほんとに本気らしい。
中山先輩に一切ボールを持たす気がないディフェンスをしている。
やはり、さっきまではわざとスクリーンにかかっていたんだな。
プレイヤーの戦術把握、そして対処の仕方。
それを試合の流れの中で理解させるためにわざと引っかかっていた。
そして、今度は逆に中山先輩が抑えられたらどうするかを試している。
星野先輩がVカットでパスをもらう。
そう。現状、中山先輩が抑えられたら先輩方(せんぱいがた)の中で一番点が取れる人はこの星野先輩だと思う。
身体能力は間違いなく高い。
サウスポー独特の距離感にシュート力もある。
ただ、少しボールハンドリングが高い身体能力に追いついていないが。
それでも、そのボールハンドリングを余り有って高い身体能力とシュート力がある。
その星野先輩にボールが渡る。
マークマンは龍也。
シュートフェイクからのドリブルで抜きに行く。
龍也も良い反応をする。
しかし、その良い反応が裏目にでて、そこから星野先輩はバックステップで距離を取る。
バックステップで間合いが
龍也は慌てて距離を詰めてシュートを止めにいくが間に合わない。
パスンと音をたてて、ボールが輪っかを通る。
「ナイスディフェンス!ありゃ仕方ないよ。切りかえていこう!」
「悪い。サウスポーは当たった事が無かったから距離感が難しいな。次はやられないよ」
「おう!やられたら、やり返せ!パス回すよ」
「頼む」
今度はこちらの攻撃。
トップからパスをだすべく様子を伺う。
龍也にパスをだそうとするが星野先輩のディフェンスが阻む。
結構良いディフェンスをする。
ポール(北野)先輩がハイポに上がってきてパスを要求してくる。
上げている右手にピンポイントでパスを送る。
ポール(北野)先輩がターンをしてハイポからミドルレンジのシュートに行く。
そのタイミングで龍也が裏を取りにゴール下に走り込む。
星野先輩は完全に反応できていない。
ポール(北野)先輩がシュートをキャンセルしてゴール下にパスをだす。それがちょうど良くフェイクになってディフェンスを欺く格好になり、どフリーの龍也にパスが通る。
ただ、大木先輩はちゃんと反応できていてカバーに入る。
龍也はそれもちゃんと視野に入っていて、キャッチと同時に逆サイドにいるフリーの千葉先輩パスをだす。
ミートはしっかりしているがシュートフォームはまだまだ素人のそれを彷彿とさせる。
ただ、高身長から繰りださせるシュートは千葉先輩のメンタルの強さも相まって可能性を感じる気がした。
ガンっ!!
シュートが入ればだが…
「飯田!リバウンド!前出せ!!」
しまった!星野先輩がスタートをきっている。
飯田先輩がリバウンドを取り、星野先輩へと大きくパスをだす。
やられた。
フリーの星野先輩は悠々とレイアップを決めた。
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