第21話

スタンピート当日。


町は物々しい雰囲気に包まれていた。治安の悪そうなリーゼントや丁髷が町を徘徊し、逃げ遅れた人を探す…逆に怯えられそうだが…


俺は予定通り町の北門で魔物を待ち受ける。


「ぜーんぜん来ないねー!魔物。」


ザブリーがそうぼやく。だが…俺は蛇だから感じるのだ…魔物が押し寄せてくる足音が。


「いや…もうそこまで来ているぞ。皆んな!準備しろ!」


俺のその言葉にザブリー達は驚きながらも戦闘体制に入る。


次の瞬間ーーー


   「「「がぁぁあばかまはた」」」


魔物の咆哮が迸る…スタンピートの始まりだ。


(数が多いなぁ…まずは、戦い易くするために数を減らすか。)


俺は魔法を発動させる。


「超級闇魔法 闇穴ダークホール」


構築された魔法陣から黒い塊が現れる。黒い塊が魔物の群れに向かって飛翔する…黒い塊は魔物を吸い込むように喰らっていく。魔物は黒い塊の前では無力でどんな魔法も攻撃も消してしまう。


(こんなものだろう。)


魔物の数は3分の1までに減った。


ザブリー達に指示を出そうと後ろを振り返る…すると、彼らは口を限界まで開けていた。


「何をボヤッとしている!残りの魔物を討伐するぞ!」


「もうアンタ1人で良くない…?」


なんかザブリーが呟いていた気がするがガン無視して、戦わせる。ザブリー達の動きは見事なもので魔物達の数はドンドン減っていく。

偶に撃ち漏らした敵は俺は魔法で殺し、町へ1匹も踏み入れさせない。


魔物の数が目で数えられる位まで減った時、ヤツは現れた。


「アレは…ドラゴン…」


そう。ドラゴンが町に向かって飛翔しているのだ。

真っ赤な鱗に包まれていて、兎に角滅茶苦茶デカい。ギルド位はあるんじゃないだろうか。あんなものが町に突撃したら終わりだ。ドラゴンが炎のブレスを吐こうとする。俺は咄嗟に闇魔法で相殺した。


(危なかった…あと1秒でも遅れていたらと思うと…)


そう思いながらザブリー達に退却を命じ、俺が前線に出る。改めて対峙してみると威圧感をドラゴンから凄く感じる。


(勝てるのか…いや!勝たないと!)


俺は自分の頬を叩き喝を入れる。


ーーもうあの頃とは違って俺は無力じゃない。守りたいものを守る力がある!


俺はドラゴンに向かって魔法を放つ。


「超級水魔法 瀑布」


大量の水が勢いよくドラゴンに向かう。多分このドラゴンは炎属性なため牽制程度にはなる筈だ。


予想通りドラゴンは水を嫌い魔法に向かってブレスを吐く。水は蒸発し炎は消える…相殺された、


(ーーーッッ!)


ドラゴンが尻尾で俺を叩き潰そうとする。間一髪というところで攻撃を避け、ペシャンコを回避した。


(水魔法だけでは相殺される!どうすれば!)


ドラゴンの猛攻を避けながら必死に俺は考える。不意を突かれ俺は吹っ飛ばされた。


「がぁっ!」


痛い。猛烈に痛い。俺はスキル・超回復を使用して折れた骨や損傷した内臓を治していく。その間にも俺はアイツの倒し方を模索する。


(何か…何かが無いんだ…合わせる…!そうだ!魔法を融合させれば良いんだ!)


俺は体制を立て直してドラゴンと対峙し、2つの魔法を発動させる。


「上級闇魔法 風化」

「超級水魔法 瀑布」


風化の能力を持つ水がドラゴンを襲う。先程と同様にまた炎のブレスで相殺しようとドラゴンは思ったのか、ブレスを魔法に向かって吐き出す…だが…炎のブレスは風化して水を蒸発させられない。勢いが凄く大量の水がドラゴンに届く。


『ギャィィィィィィ』


ドラゴンの絶叫が響く。水で弱った箇所から風化の魔法で身体が崩れていく。


「スキル 身体強化」


俺はドラゴンが完全に塵となる前にアイツに接近する。そしてドラゴンの目の前に立ちスキルを発動させる。


「スキル 剛腕」


強化された腕でドラゴンの目玉を抉り出した。ドラゴンは弱りきった声音で絶叫する。俺は抉り出した目玉を口に頬張り咀嚼する…頭の中に声が響く





ーーー《スキル・飛翔を獲得しました》




ーーー《スキル・ブレスを獲得しました》




ーーー《スキル・竜眼を獲得しました》




スキルを取得している間にドラゴンは生き絶え、魔石になった。ドラゴンの討伐終了と共にスタンピートは終わり、俺たちは町を守り切ったのであった。

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