第17話

ーーー町の中を風の如く駆け抜ける。いつもは楽しんで歩く道もただただ、鬱陶しく感じる。


(いつスタンピートが始まるか分からないんだ…!)


沢山の命が失われるかも知れない。


そんな事を考えながらギルドへ急ぐのであった。



漸くギルドに到着した。

俺は扉を開ける時間も惜しくなった為そのまま扉に突っ込み、ぶち壊した。


『な、何事だ!?』


『えっ!扉が粉砕されてるんだけど!?』


ギルドの彼方此方から声が上がるが、俺はナヌリーに向かって走り抜ける…急に止まれず壁に突っ込んでしまった…痛い。だがそんな事はお構いなしにナヌリーに話しかける。


「ナヌリー!!!」


「ど、如何したんですか!?星辰シンさん!?正面から派手に壁と抱擁を交わされているようでしたけど!?」


ナヌリーが、これでもかってくらいに目を見開く。


「至急ゴッツさん…ギルドマスターに会わせてくれ!!」


俺の熱意が伝わったのかナヌリーは引き締まった顔で


「分かりました。ギルド長室へご案内させて頂きます!」


こうして俺達はゴッツさんの元へ向かった。




目的地の扉をナヌリーがノックをする。


ーーー今はその時間さえも惜しい。


「失礼致します。ギルドマスター。A級冒険者の星辰シンさんがお会いしたい様です。」


少し間を開けてゴッツさんが返事をする。


「入って頂戴。」


ゴッツモードでは無く、エリリンモードであった。


「失礼します。」


俺は焦ったい気持ちを最大限に抑えながら入室した。


「星辰。何かあったようね。話して頂戴。」


俺は一回深呼吸をし、息を整えてからエリリンの目を正面から見つめて話し出す。


「単刀直入にお話しします…近い将来、この町の近い森でスタンピートが発生し、町を襲います。」


エリリンは驚いた顔をしながら俺に問う。


「…何故分かるのかしら?」


最初から順序立てて彼女?彼に説明する


「まず、俺が所持しているスキルの1つに"共食い"という相手の一部を食べる事でスキルや魔法を習得を可能にするスキルがあります。」


エリリンはそんな強力なスキルが存在したのね…と呟いていたが、俺はガン無視して話を進める。


「今日依頼で"千里眼"の討伐を引き受けました。その際に千里眼の沢山あるうちの1つの目を食べた時に"未来視"というスキルを獲得しました。」


エリリンは真摯に話を聞いてくれている。


「スキルを試すために未来視を発動させたのです。その時にこの町が沢山の魔物に襲われている光景が見えました…最も、いつ、何処の森から、どのくらいの規模かは、俺の目の限界を超えて見えませんでした…力不足で申し訳ありません。こんな不透明な話…信じてもらえませんよね…」


俺は強くなっても肝心な所で役に立たないのだ。不甲斐ない気持ちの影響でエリリンの顔を見ることが出来ず俯いてしまう。こういう所は本当に変わらないのだ。


永遠にも感じられた数秒後に頭の上から声がかけられる。


「頭をあげて頂戴。」


俺はその言葉に一瞬躊躇ったが従った。

するとエリリンの覚悟が決まった目で見据えられる。


「信用するわ」


ーーーえっ?


「あんたが嘘を吐く様な人物ではないと、この短い間で分かっているわ。だからそんな顔をしないで。」


エリリンが優しい微笑みを向けてくれる。


ーーーあぁ。俺は信じて貰えたんだ。


俺の頬に一筋の雫が流れてきた。


「なによぉ!泣く事ないじゃない!スタンピートの件承知したわ!今から隠密に長けている冒険者を近くの魔物が生息する森々に向かわせるわ!だからこの件はギルドに任せて頂戴!」


俺は信じて貰えた嬉しさで胸が暖かくなる。


「分かりました!スタンピートが起こった時は俺が先陣を切り戦います!」


宣言するように、誓いを立てるようにギルドマスターに言う。


「言うじゃない!あたしの強さを見せつけてあげるから!」


こうしてスタンピート対策に向けて動き出すのであった。

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