第14話
コージー達を路地裏に放置し、騎士団に匿名で通報した後俺は宿屋"オリオン"へ向かっていた。
(大分遅くなってしまった…ピィナ激怒してるかなぁ…)
そんな事を思いながら目的地に着いた。
こじんまりとした外観に沢山の花が飾られていて、まるで童話の中に登場するような見た目だ。
俺は花の色鮮やかさに驚きながらも宿屋の扉を開ける。
「ようこそおいで下さいました。」
品の良い老婆の声が俺を出迎える…俺はカウンターへ向かった。
「あの…ピィナという冒険者の部屋は何処でしょうか?」
そう老婆に話しかけると老婆は顔を綻ばせて
「あら?ピィナちゃんが言っていた冒険者さんは貴方かしら?」
そう俺に聞いてきた。俺はその通りだと老婆に返事をした。
「矢張り貴方だったのね!分かりやすかったわ!だって首にそんな猛毒を持つ毒蛇を巻いている変わった人だなんてそうそういないもの!私はエルマというの…末永く宜しくお願いするわね!」
…変わった人って…若干その言葉に傷つきながらも俺は愛想笑いをした。老婆…エルマさんの言葉はまだ続いている。
「ピィナちゃんが貴方の為に用意した部屋は彼女が泊まっている部屋の右隣…2階の角部屋よ。
ピィナちゃんは203号室だから…204号室ね!」
俺は部屋の鍵を受け取り2階の部屋に向かう。階段を登って行く途中エルマさんが声を張り上げて
「お夕食は1階の食堂まで来て頂戴ね!後1時間後には孫を呼びに向かわせるわ!」
「はーい!分かりました!」
俺は元気よく返事を返した。階段を上りきり、まずはピィナが宿泊している部屋に向かう。
ーーーコンコン
ノックを2回して、少し間を置いた後返事が聞こえた。
「はーい!今開けるわ」
扉が開かれ先程よりもラフな格好をしているピィナが目に入る…少々露出し過ぎてでは無いだろうか…
ピィナ少し目くじらを立てているのに口元は大変笑顔であった。
「あらぁ…何処の誰かと思えば露出狂さんじゃ無いの…今まで何しやがっていたんだこのボケ」
めっっっっっっちゃ怒っている!俺はグリフォンや悪魔公爵と戦った時よりも恐怖を感じた。
「あっ…あのぉピィナさん…」
俺は恐る恐る声をかけた。それを皮切りにピィナの怒涛の説教が始まった。
「アンタ!今の今まで何していたんだ!ギルドからここまでそうかからないだろ!?意味分からないんだけどぉぉ!?」
良かった…血塗れのままにしておかないで…新たに習得した水魔法で服を洗い、風魔法で乾かした…本当は着替えれば良いのだろうだが俺は無一文な上に服はこれしか持っていない。
「え、えっとみ、道に迷って…」
大嘘だ。レッサーサーペント時代にこの町に何度も来ている為構造は知り尽くしている。たがピィナはこの事を知らない為上手く騙せたようだ。
「そー言えば地図渡して無かったわね…悪かったわ…」
…俺の中の良心が痛む。
そんなやり取りをした後、俺たちは取り留めない会話をしていた。
1時間後
ピィナと会話している途中にノックの音が部屋に響いた。
ーーーコンコン
「はーい」
ピィナが扉を開けると、そこには可愛らしい女の子がいた。アッシュブラウン色の髪をおさげにしていて大きい茶色の瞳がチャームポイントだ…まだ10歳前後の見た目だ。女の子はあどけない声で
「お食事のご用意が整いました!一階の食堂までお越し下さい!」
ーーー可愛い。癒しだ。
俺は思わず顔がにやけてしまう。
「あら!エルナ!わざわざ呼んでくれて有難うね!直ぐに食堂に向かうわ!」
(えっ???)
あのピィナが優しい声で喋っているだ…と…!
嘘だ!ぴっピィナと言えばいつも不機嫌そうな態度で顔は鬼だ!ソレが顔を綻ばせて優しい雰囲気だと!
俺は思わずピィナを凝視してしまう。
女の子…エルナはそんな俺を不思議そうに見つめた後
「では、先に食堂でお待ちしてますね!失礼します!」
エリナが元気よくそう言って去っていった。
俺はまだピィナを凝視していた。そんな俺の視線に気付いたのかピィナがいつもの不機嫌そうな顔で
「何よ?私の顔になんかついてるわけ?」
めっちゃガラ悪い。
「い、いや…何でも無いよ…」
貴方の態度と笑顔に驚いていました…いつも不機嫌そうだから。だなんて言える訳が無い。言った暁にはマジで半殺しでは済まないだろう。
ピィナは怪しみを含んだ視線でみてくる。
俺はそんなピィナの視線を振り切りたい為話を変える。
「あのエルナって女の子可愛かったね!」
ピィナが今度は冷たい視線でみてくる。何故だ?
「アンタ…まさかエルナをそんな目でみていたわけ?」
???そんな目とは?不思議さを含めた目でピィナをみる。
「アンタ…エルナに手ぇ出したら殺すからね」
まさかだと思うが俺はロリコンだと思われている!?俺にそんな趣味はない!おっぱいが大きいお姉さんが好みだ!
そんな事を思っているうちにピィナは先に食堂へ向かっていた。慌てて俺はピィナの後を追うのであった。
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