第13話

side コージー


時は遡り数時間前



俺は苛立ちを隠せないままギルド長室をでた。


ーーー畜生畜生!何で俺がこんな惨めにならないといけないんだ!決闘を申し込みながら俺があんなナヨナヨしい男に負けただなんて信じられない。


思わず壁を殴る…拳が痛い。


そんな俺をみてユールーズが心配してきた…今はその心配はうざい。


ギルドの受付場に行くとたくさんの冒険者が俺を見てこういう。


『失禁野郎』


『ザ・雑魚』


『ザマァァァ!』


悔しい悔しい悔しい!こんな事になった原因のアイツが許せない!


俺は宿屋に戻りユールーズとヨーエを自室に集めあの男に報復すると話した。


「俺は俺のことを辱めたアイツに報復する!アイツを俺の奴隷にしてやる!」


ユールーズはすぐに俺の意見に賛同した。


「イケメン高身長細身は滅ぶべきでふ!奴隷にして思い知らせるでふ!」


前半は何言っているか理解できなかったが取り敢えずユールーズもやる気なのは分かった。

ヨーエは少し考え込み返事をした。


「ヨーエ達3人ならあのイケメンを奴隷に出来るわよね?」


「あったりまえだ!」


ヨーエが当たり前なことを聞いてきた。


「さっき俺が負けたのは手加減してやったからだ!3人がかりならアイツも負ける!」


物凄くダサい事を言っているのにコージーは気づいていない。


「さっき失禁してたくせに…でもあのイケメンを手に入れる事なら賛成だわ!」


ヨーエが要らない事を言う。


「う、うるせ!!!」


こうしてあの男を奴隷にする計画を練ったのであった。










ーーー数時間後








アイツがギルドを出たため後をつける。

我ながら完璧な尾行だ!!!これならバレないだろう。



ーーーバレバレだ。




アイツがどんどん人気の無い路地へ入っていく…好都合だ!やり易くなる!


人が完全にいなくなった後俺は剣をアイツの肩に目掛けて突き出したのだが…軽々と避けやがった。


「チッ外したか…」


思わず舌打ちをしてしまった。奴は特に驚いた様子を見せず、すました態度を取っていやがる!本当に苛つく奴だ!今に見ていろよ!その余裕綽々といった表情を苦痛と辱めで染めてやる!

俺は先程受けた仕打ちを思い返してまたムカつきが再来してきた。


「さっきは俺をボコボコにしてくれたなぁ!よくも俺を恥ずかしめやがって!テメェを俺の奴隷にしてやる!」


「そーでふ!大人しく金だけ置いて死にやがれでふ!」


「ヨーエに忠誠を誓って犬になってくれるんだったら可愛がってぇあげるけどぉ!」


ユールーズ達も思い思いにアイツに文句を言う。

奴はこの言葉に怒ったのか少々怒気を込めながら


「誰がもう一度お前たちの奴隷になるものか!」


ん?もう一度?コイツは俺と顔見知りなのか?こんな女みたいな男一度見れば忘れないと思うのだが…ヨーエやユールーズも同じ事を思ったのか顔を疑問で染める。


「はぁぁぁ?俺たち初対面だが!"もう一度"って如何いう意味だ!」


俺は苛立ちを込めながらそう言った。

奴はその言葉に怒りを通り越して呆れ顔でこう言った。


「…初対面じゃ無い。俺はお前の従魔だったレッサーサーペントだ。」


???


「は?」


「でふ?」


「え??」


上から俺、ユールーズ、ヨーエだ。


コイツがあのレッサーサーペントだと?あり得ない!だってアイツは


「そんな訳ないだろ!あのクソ使えない無能な雑魚サーペントはグリフォンの生贄にした!生きているハズないだろう!」


そうだ俺の命令でグリフォンへの生贄にした筈だ。

奴は殺気を込めながら…


「蛇の生への執着を甘くみたな…蛇は執念深いんだ。グリフォンは俺が殺した…さっきゴッツさんが言っただろう?次はお前たちだ。蛇は怨み深いんだ…」


そう言い放つ。俺達は奴の放つ殺気と威圧感、言葉に恐怖を感じ腰を抜かす。だが俺は強い!強いんだ!勇気を振り絞り俺は言う。


「!誰のおかげで今まで生きてこれたと思っている!もう一度俺の従魔にしてやるから許してくれ!


俺は慈悲深い。一度の間違えは見逃してやるし謝ってやった。ユールーズ達もそんな俺の勇姿をみて感銘を受けたのか


「そーでふ!お前はコージーさんの役に立てた事を喜ぶでふ!」


「あんな雑魚でもヨーエの為になった事を感謝するべきよ!」


そう言った。これで許してくれただろう…!すると奴が急に魔法を放ってきた。


「中級闇魔法影縫カゲヌイ


俺は地面に縫い付けられる…怖い怖い怖い!俺はいきなり拘束された恐怖からパニックに陥ってしまった。それはユールーズの奴等も同じだったようだ。


「ゆ、許してくれ!俺たち…いや俺だけで良い!助けて下さい!」


「こ、こ、コージーさん!?」


「はぁぁぁ?!こいつらじゃなくてこの美人なヨーエを助けなさいよ!」


俺は俺だけが助かれば良いと思った。俺は恥も外見も捨てて必死に命乞いをする。それが功をそうしたのかアイツが馬鹿なのか


「安心しろ…命は取らないでやる」


そう言ってきた。精々騎士団に突き出される位だろう!解放されたらコイツを殺してやる!しかし


「死よりもきつい罰を下すだけだ。」


ーーーぁ…俺は死を覚悟した。奴は無表情で俺たちを…俺を見下す。その無表情さと目の冷たさに思わず温かい水が地面を濡らした…俺だけではなくヨーエやユールーズも失禁してしまったようだ。


奴が俺に近づいてくる…来るな来るな来るな!俺はグリフォンに遭遇した時よりも恐怖を感じた。





ーーー奴は俺の利き手を喰い千切った。



血管が伸び骨は砕け傷口はズタズタだ。

「ひがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!お、俺の手が手が!」

生まれて初めて感じる痛みだ…燃えるように痛い。痛い痛い!俺が何をしたと言うんだ!奴は虫をみるかのような目で俺を見下す。


次はユールーズの番だった。俺の姿を見てユールーズは逃げようとする…がアイツが放った魔法がそれを許さない。ユールーズは




ーーー片足を喰い千切られた。





傷口は俺と似たようななもので千切れた筋肉と脂肪。血管は引きちぎられ、骨は砕けている。


「あびがゃぁぁぁぁぁぁ!あ、足が!」


ユールーズの絶叫が遠くに感じた。痛みから逃げようと意識が堕ちてきたのだ。


次はヨーエ。彼女は髪を振り乱しながら拘束を抜けようとする。だがユールーズと一緒の結果だった。

奴はヨーエの




ーーー片目を抉り出し喰らった。




窪んだ眼窩からは止め無く血が溢れ出てきている。


「あばぼがぁぁぁぁぁだがぁぁぁ!目が!!」


ヨーエから人とは思えない絶叫が響くが俺の意識はもう飛んでいた。















ーーーside 騎士団



私達は匿名の通報を受けて人気の無い路地に向かう。そこは地獄のような光景が広がっていた。


建物には血が飛び散り地面は赤黒く染まっている。

失禁したのかアンモニア臭と血の錆びた鉄の臭いが漂っていた。正直言ってめっちゃ臭い。


そんな中3人の冒険者らしき人が倒れていた。

1人は化粧のきつい女て2人は男だ。近づいてみると


「くっッッッっさ!」


仲間が思わずと言ったように叫ぶ…気持ちはすごく分かる。腋臭や腐った肉のような体臭。吐く息はうんこの臭いがする…正直耐えられない。


取り敢えず騎士団の駐在場に運ぼうと腕を掴んだのだが…


「うっっっっわ!ヌルヌルのベタベタ!」


かなりの脂性なのかヌルヌルとしている。もう放置していたいがそうはできなかった。何故なら彼等は酷い怪我をおっていた。男のうち人相が悪い者は手を喰い千切られた様に右手が手首からしたが無い。

小太りな男は片足の足首から下が喰い千切られている。化粧の濃い女は目が抉り取られていた。


何があったのか事情も聞きたい為仲間と協力しながら臭さにたえ駐屯場へと運んだのだった。













暫くして駐屯場の医務室に運んだ…きっとこのベットは廃棄させるだろう…。

足や腕の再生を試みるが何故か生えてこない。まるで呪いに掛かっているようだ。

仕方なく傷口を縫い其々処置を施した。血が大量に失われたようなので医務担当が造血剤を点滴にして投与する…命に別状はないようだ。


1時間が経過し3人のうち1人、人相の悪い男が目を覚ました。


「うっ…ここは?」


男が眩しそうに目を細めながら言う。


「ここは騎士団の駐在場の医務室だ。」


俺は男にそう言った。男は不思議そうに俺に問うてくる。


「何でだァ…?…あれ…手がない…えっ?はっ?」


男はひどく混乱しており暴れ出した。


「返せ!返せ!俺の!手を!戻せ!」


仕方なく抑え付け鎮静剤を打ち込む…程なくして男は落ち着いた。俺は何があったのか男に聞いたが…


「わ、わからねェ…何にも覚えてないんだ…俺の名前も職業も…」


記憶喪失になっていた。因みにこの後目を覚ました他の男と女にも事情聴取をしたが同じ返答であった。



後に調べると男達は素行の悪い冒険者であった。人相の悪い男はコージー、小太りな男はユールーズ、化粧の厚い女はヨーエ。かなりの冒険者等から嫌われていたようだ。


だからこの事件は冒険者同士の諍いとして処理されたのであった。

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