第10話
ギルド長室へ俺たちは着いた。
ギルド長室は資料や何かの紙が散乱しており、ゴッツの忙しさを物語っていた。
ゴッツの威圧感と中々入る機会がないギルド室を前に俺はガチガチに緊張していた。
(失礼の無いようにしないと!)
そんな俺の緊張を感じ取ったのかピィナは俺に
「エリリ…ゴッツさんはお茶目な人だから大丈夫よ!安心して」
…実はピィナはゴッツの乙女趣味を知っている数少ない冒険者だ…だから本来の彼を知っている。
だが勿論星辰シンはゴッツと初対面な為知らない。
(ほ、本当か…この人俺の事を獲物を見つけた猛禽類の目をしているんだが…)
何故かゴッツは俺の事を鋭い目つきで見ていたのだ。
「皆座り給え。」
ゴッツの野太い声で俺とピィナはゴッツの目の前に、ナヌリーはゴッツの右隣に腰をかけた。
ピィナは勝手知ってたる態度でソファーに座るが俺は緊張しているため背筋をピンと伸ばし浅めに腰掛ける。
「星辰。何も俺はお前を食ったりしない。楽にしろ」
ゴッツにそう言われるも中々俺は緊張が取れない。
ゴッツは俺の目を見据え問いかけてくる。
「君の身に起きたことを君の口から詳しく聞きたい。」
そう言われて俺は今まで起きた事を話した。
ある冒険者…コージーに生贄としてグリフォンに差し出され捨てられたこと。
死の間際に進化して何とかグリフォンを倒したこと。
森の中を彷徨っていたら隠しダンジョンに迷い込んでしまいダンジョンボス…悪魔公爵と戦い激闘の末倒した事。
話していくうちにゴッツの顔が険しくなっていく。
「君は元はコージーの従魔だったんだな…自分の従魔を捨てるんだなんて…随分と酷いな…」
ゴッツはしみじみと呟いた。
「星辰さん…苦労成されたんですね…やはりコージーさんは最低のクソゴミカスですね…」
ナヌリーが目に涙を浮かべながらそう言ってきた。…コージーの事はかなり嫌いなようだが…
「でも、捨てられて正解じゃない?そのコージーって奴から解放されたんだから。」
ピィナが言う。確かに俺は捨てられて正解だったと思う…だってクソゴミカスボケのコージーから離れられたのだから。
ゴッツが意を決したように俺に聞いてくる。
「あんた!魔石は持ってるかしら?」
何故かゴッツの口調がオネェ様になっている…急に如何した???
「ちょっ!エリリンさん!素になってますよ!」
ナヌリーが慌ただしくそんな事を言っていた。
…もしかしなくてもゴッツはオネェ様なのだろうか…?
「良いのよ!ナヌリー!アタシこの人を一目見た時から気に入っていたの!好きなオトコには素をみせたいじゃない!?」
ゴッツがそんな事を言っている…矢張りオネェ様だ。俺はそんなやりとりを呆然とみているとピィナが突いてきた。
「早く魔石出したらどうなの?」
おぉ…今のやりとりでスッカリ頭から抜けていた。俺はスキル アイテムボックスを展開して中から大きな魔石を2つ出す。
「アンタ…アイテムボックス持ちだったのね…」
ゴッツが感心するように言ってきた。
「コレがグリフォンと悪魔公爵の魔石です。」
ゴッツが魔石を手に取りじっくり見ている。少し時間を開けた後
「確かにこの魔石はSS、S級の魔石ね…アンタ何者?」
俺は少し躊躇いピィナの方を伺う。ピィナは軽く首を縦に振り俺の種族について話しても良い許可を貰う。間を開けて言葉を放つ
「俺は元レッサーサーペントの八岐大蛇ヤマタノオロチです…」
ゴッツとナヌリーは目を見開き俺を凝視する。
そんなに目を開いたら目が落ちてしまいそうだ…
「あ、あ、あ、アンタ!あの八岐大蛇なワケ!?あ、あたし初めてみたわぁん…実在したのねぇ…」
「や、八岐大蛇…S級の魔物の中でも上位にランクインする厄災…」
上からゴッツ、ナヌリーだ。2人とも茫然自失と言った様子だ。ゴッツが口を開く。
「アンタ…冒険者になりなさい…」
「えっ」
俺は思わず間抜けな声を出してしまった…だっていきなり冒険者になれだなんて…困惑しない方がおかしい。ゴッツが続ける
「アンタは全世界で指定されている厄災。しかも謎多き八岐大蛇…もしこの事が国の上層部に知られてみなさい…アンタは実験動物として捕まえられる。」
確かにその通りだ…でも一体なぜ冒険者になることになるのだろうか?ゴッツは更に
「だけど、もしギルドに所属していたら国も簡単には手が出せないわ…ギルドはどこの国にも属さないし庇護も受けていない非政府組織。だから国はギルドに強制命令を出せないの。そしてギルドに所属すればあんたにもそれは適応されるわ。」
そうなのか…俺の身の安全を保証されれば心強い。
まだゴッツの話は続く
「それに…冒険者になれば身分も保証される上に魔物の素材や魔石が高く売れたり提携している宿屋は安く泊まれたりするわ。」
お得だ。資金が今ない俺にはいい話だけ。
「分かりました!俺冒険者ギルドに登録します!」
断る理由がない為俺は冒険者になる事を決めた。
それと俺は今まで森で獲得した魔石を売りたい胸をゴッツに伝えた。
「どのくらいの量かしら?」
と聞かれたのでアイテムボックスを開き魔石を部屋一杯に出した。
「こ、この量は異常ねぇ」
ゴッツが引き気味でそう言ってきた。ちゃんと全部買い取って貰えるか不安になり彼に聞いた。
「これ…全部買い取って頂けるでしょうか…?」
ゴッツはまだ顔を引き攣らせながら
「じ、時間は掛かるけど、この量だとざっと数百万ゴールドにはなるわね…」
「まじですか!?」
しばらくの間は生きていけるようだ!金は大切だからな!いくらあっても足りないぐらいだ。
「ナヌリー。ギルドの職員を呼んで手分けして魔石を運び出してちょうだい。あとクソカスゴミボケうんこのコージー達を呼んできて。しばくから」
ゴッツがナヌリーに指示を出す。
「分かりました。直ぐに取り掛かります!」
それにしてもコージーまだこの町にいたのか…小心者のあいつならグリフォンを恐れて別の町に行っているかと思っていた。
「ピィナ。アンタはもう下がって良いわよ…星辰は残ってちょうだい。コージーをシバクのをアンタには見届けて欲しいから。」
「分かりました。」
「わかったわ。先にアタシは宿屋に戻るわ…星辰後で"オリオン"っていう宿に来て…アンタの分の部屋を取ってあげるから。」
「ピィナ有難う!コージーをシバクのを見届けたら直ぐに向かうね!」
そう言葉を交わしピィナは部屋を出た。
ゴッツと2人きりになる…話す事がなく気まずい空気だ。俺は何か話そうとしたが
「ねぇアンタ。」
ゴッツが先に話しかけてきた。
「何でしょうか?ゴッツさん」
助かったァァァァァ本当に気まずいんだもん!
「エリリン」
「え?」
「エリリンって呼んでちょうだい。ゴッツって名前は可愛くなくて嫌いなの。」
ハードル高いな!!!ゴツいおっさんをエリリンって呼ぶのはキツイ
「呼んでみて」
そう言われたので俺は恐る恐る口に出す。
「え、エリリン…さん」
キッツ!キッツ!無理がある!
「まだ、ぎこちないわねぇ…」
ゴッツ…エリリンは足を組み小首を傾げ、右頬に手を添える。……なんとも言えない。
「それと星辰はあたしの事好き…?あたしはあんたの事オ・ト・コ・ノ・コとして一目惚れしちゃった♡」
「え"」
えぇぇぇぇぇぇ!生まれて初めての告白がこんなおっさんにされるんなんて!この世は無情だ!
俺は戸惑い何も喋れない。
「で…あんたはあたしのこと、オ・ン・ナ・ノ・コとして好きになってくれる♡?」
無理無理無理無理!絶対無理!俺は異性が好きだ!
そんなことエリリンに言えるはずなく言葉を探していた。
「………」
気まずい空気part2。如何しようかと考えていると不意にノックの音が響いた。
ーーーコンコンコン
「誰だ。」
エリリンからゴッツに戻る…助かった!今後ゴッツと2人きりにはならないようにしよう!
そんな事を密かに思っていると、ギルドの男性職員が
「コージーら3名をお連れしました」
なんとコージー登場である。
この時はまだ知らなかった。まさかコージーがあんな行動に出るとは思わなかったのだ
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