第9話

side 男


俺の名前はオンナガ・スキデーアールだ。

全体的にシュッとしているナイスガイだ。今日も俺は自分の欲を満たす為に町で女の子を物色してたんだ…


(おっあんなところに蹲っている素敵なルレディィィィェェェがいる。)


俺は道のど真ん中で蹲っている水色のフリフリなワンピースが似合う儚げな雰囲気の女性だ。


(ぐふふふゥ丁度いいあのルレディィィィェェェにしよう!気が弱そうだし楽しめるだろ!)


そう俺は思い顔一杯に素敵な笑みを乗せ女に声をかけた。


「よぉ可愛らしいお嬢ちゅあん…こんな所で蹲って如何したんだい?お兄さんが聞いてあげよう…ぐふふふふぅ」


そう声を掛けながらさり気なく俺は女の子の腕に触れる。スベスベだ!


ーーー完璧だ!流石俺!立派な紳士にも程がある!


女が顔を上げ俺を見る…なんて美しいんだ!長い睫毛に月を想起させるような金色の瞳!長い髪は太陽の光を反射し輝いている!顔に入っている鱗のような刺青?が更に神秘さを出している…まるで美の権化だ!


そんな事を思っていると何故か女の子は顔を顰めていた。段々女の顔色が何故か悪くなっていく。


(丁度いい…このまま宿屋に連れ込んでイチャイチャしよう…ぐふふふぉ)

良い気分だ。俺は更に紳士ムーブを醸し出し女に声をかける。


「おやぁ?顔色が悪いねぇお兄さんが宿屋に送ってあげよう…ぐふっ…あぁ勿論何もしないからねぇグヘッ」


流石俺!もう完全に良い人だ!女も断らないだろう!そう思っていた矢先に衝撃の事実を知る。女が口を開き鈴を転がすような声で喋ると思ったが…


「お、お気持ちは有難いですが顔が白いのはもともとですので…お気になさらず…」


(………。えッッッ!)


聞こえてきた声は鈴を転がすような可愛らしい声ではなく、透き通るような美しい低音の男の声だったのだ。


(コイツ!この俺を騙したな!)


俺は激怒した。可愛い女だと思っていたに!この詐欺師がァァァァァ!


「おっお前!男だったのか!よくも騙したな!このクソ野郎!死ね!この女装変態男!」


俺は怒りのままスキルを発動させる。俺の力はパンチを素早く何回も出せる強いスキルなのだ!


「スキル! 高速打撃!」


(コイツの高い鼻をへし折ってやるぅぅぅ!)


しかし女装男は俺の拳を余裕綽々といった様子で軽々と避けて行く


(〜〜〜〜!避けやがって!)


俺の怒りは限界を超えついにクッッソ怠いが強力な魔法を放つことにした。すっっっごい面倒臭い術式を編み込み最後に詠唱をする。


「偉大なる炎よ!今我の力となり敵を燃やし尽くせ!中級炎魔法 炎弾ファイヤーパレット



俺は中級魔法を発動させた。中級魔法を使える者は数少ない…!コイツにこの技を防ぐ術はないのだ…だが


「上級闇魔法 風化ふうか


男が詠唱も術式を組み立てるのも全て省略した。何より…


(じょじょじょっ上級魔法ぅぅぅ!?)


上級魔法だなんて使えるのはSS、S級の冒険者か宮廷魔術師にしか使えない…才能を授けられた者にしか行使が許されない力なのだ。


俺は呆然としてしまう…だって俺が苦労して組み上げた魔法陣や発動させた魔法が砂の如くに崩れていっているのだ。


(………)


呆然としている内にまた女装男が魔法を発動させた。


「中級闇魔法 闇手ダークハンド


地面から黒い手のようなモノが生えて来る…その腕は俺の口を塞ぎ魔法とスキルを使えないように無力化してきた。腕の力は凄く拘束から抜け出せない。


俺は無様に負けたのだった。


暫くすると騎士団の連中が駆けつけてきて女装男が事情聴取を受けている。

そして俺は身柄を引き渡されてお縄についたのであった。


ーーー 一体あの女装男は何者だったのか…


そんな疑問が頭の中一杯に広がるのであった。

















side 星辰


ピィナと一緒にギルドに着く。

これまた俺は性能が上がった目でギルドを見る。

ギルドは石造の大きな建物でびくともしなさそうだ…きっと冒険者が暴れても壊れないようにしてあるのだろう。

やはり色がついて見えるのは最&高だ!!

俺がギルドの建物に見惚れているとピィナが少し苛立った声で喋りかけてくる。


「おい!バカ蛇!こんな所で突っ立つな!目立つだろ!ただでさえアンタの顔は目立つんだから!不審な行動は取るな!」


…怒られてしまった…渋々ピィナに従いギルドの中に足を踏み入れる。


此処でもやばい俺は感動してしまうのであった。

温もりを感じさせる色合いの家具や壁、床そしてたくさんの冒険者達。依頼を物色している姿や備え付けの酒屋で真昼間から酒盛りを始めている人。ギルド職員達の慌しい足音。全てが新鮮に感じるのだ。


またまた俺は入り口の前で突っ立ていた為ピィナに怒られてしまった。


ーーーぴえん



ピィナは通い慣れた姿である受付嬢の所に向かう。

その受付嬢は可愛らしい人であった。甘栗色の髪の色に綺麗な蒼い瞳…小動物のような雰囲気だ。なりより…大っきい…大きいのだ…胸が…。ギルドの制服の下からでも分かるあの大きさ。ピィナに少し分けてやったら良いと思うレベルだ。

そんなクッソ失礼な事を考えているとピィナがお胸の大きい受付嬢に話しかけた。


「やっほー!ナヌリー!」


彼女はナヌリーと言うらしい。


「あっ!ピィナさん!お疲れ様です!そちらの女性は…?」


女性?誰の事だ???ピィナと俺は顔を示し合わせるが全然分からない。ピィナがナヌリーに聞く。


「ナヌリー。アタシは女だなんて連れてきてないよ?」


するとナヌリーが驚いた顔で俺を見る。


(???)

驚かれるような心当たりは無い。ナヌリーが恐る恐ると言った声音で…


「えっ…其方の淡い水色のフリフリしたワンピースを着ている方は…男性なのですか…?」


ピィナと俺は今気付いた。…俺は女装したままだとッ!完全にヤバいやつだ!


「そ、そういうご趣味の方の知り合いも居ますので大丈夫ですよ!」


ナヌリーが此方に気を遣うように言う。…その優しさが逆に俺の心に深く傷をつける。


ピィナが少し慌てたようにナヌリーに俺の事情を話し始めた。ナヌリーは真剣に聞いている…何処かの誰かさんとは違い不審者扱いして来るどころか心配までしてくれた。


「えっ!そうだったんですね…それはお疲れ様でした…宜しければ男性用の服を手配しましょうか?」



渡に船だ!俺は思わずナヌリーの手を取り顔を近づける。


「是非お願いします!あっあとパンツもお願いします!」


股間がスースーして堪らないのだ。

ナヌリーが顔を少し顔を赤らめ裏ずった声で噛みながら


「わ、分かりまひた!で、では容易致しましゅ!」


ナヌリーがギルドの奥へ姿を消した。

ピィナが呆れた声で俺に話しかける。


「アンタ…罪な男ね…ナヌリーを弄んだら許さないわよ」


何故か脅されたのだった。





暫くしてナヌリーが服を持ってきてくれた。


「有難う!本当に!君は女神だね!」


またナヌリーのまた顔が赤らむ。熱いのかな?


「〜〜〜ッ!は、早く着替えて来てください!」


俺はナヌリーに急かされながら更衣室へ向かうのであった。



ーーー更衣室にて


更衣室で俺は渡された服に腕を通す。

黒いシャツに黒いズボン。パンツはボクサーパンツだ…けっっっして紐パンでは無い。紐パンは俺には合わないのだ。


更衣室を出て受付室に戻る。戻る途中何故だかこそこそ話しがたくさん聞こえてきた…今は女装していないのだが…


『あの人かっこよく無い!』


『めっちゃタイプ!!!』


『踏んで欲しい』



まさか俺の良い話だと思わず足早にその場を立ち去るのであった。




ーーー大広間、受付場にて


俺は受付場に戻りナヌリーとピィナを探していたがすぐに見つける。だって近くに岩のように大きく筋肉が凄いスキンヘッドの男がいたのだから…こっっっわ!

恐る恐る近づいていきピィナに話しかける。

ピィナ達は俺の方に身体を向け話しかけてくる


「あぁ…アンタね…まともな格好だとカッコいいじゃ無い…」


何故かピィナとナヌリーの顔が赤い…2人とも体調が悪いのだろうか???

そんなことを思っているとゴツい人が俺に話しかけてくる。


「お前がグリフォンと悪魔公爵を倒した星辰か?」


威厳が凄いな…この魔力量A級冒険者に匹敵するのでは無いだろか。


「俺はこのギルドの長ゴッツ・ムキムキーという。

グリフォンと悪魔公爵について詳しい話を聞きたい。ギルド長室まで来てもらうぞ。」


有無を言わせない声音でそういってきた。

断る理由が無い為俺はゴッツ・ムキムキーについていくのであった。

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