第7話


ーーー2週間前



sideギルド




コージー達が退出した部屋にはギルドマスターであるゴッツだけが残されていた。


「はぁぁぁ」


ゴッツは痛風とヘルニアに失恋したような気持ちでため息をつく。

彼はゴツい身体を丸め、小さくする。さながら大きな岩のようだ。


「もぉぉぉんヤァダァ!」


実は彼は心は乙女であったのだ。

この事実を知っているのはギルド職員だけなのだ。

冒険者に知られると気味悪がられる上に舐められるのでごく一部の冒険者には教えていない。


今部屋にはゴッツしかいない為素を出して嘆いていたのだ。


「いきなり漆黒の森にグリフォンが出るだなんて…なんて事なの!普段は天宮山にいるじゃ無い!大人しくしていなさいな!?」


心からの叫びだ。


「もぉストレスでアタシの可愛らしいお顔に吹き出物ができちゃうじゃ無い!それに肌荒れだって起こしちゃうわ…」


乙女なのだ。彼は本当に乙女なのだ。


「あぁん!ついていない!最悪!」



ーーーコンコンコン

ノックの音が部屋に響く


「あぁんもう!誰!入ってちょうだい!」


「失礼します。」


入って来たのはアタシと良く美容談話をする仲のナヌリーであった。


「ギルドマスター…」


ナヌリーが話し始める前にアタシはこう言った


「エリリンと呼んでちょうだい。ギルドマスターだなんて可愛く無いわ!」


ナヌリーは少し困ったような表情を浮かべ話し始めた


「エリリンさん先程王都にグリフォンが出た事と調査及び討伐の為S級冒険者を此方に回して欲しいという胸を連絡致しました。遅くとも2週間後には手筈が整うはずです。書類作成と騎士団へ漆黒の森を閉鎖するよう要請を出しておきました。」


もう仕事を終えたみたいだ。


「流石ね!ナヌリーは仕事が速いわ」


そう褒めるとナヌリーは照れたような笑みを浮かべる。


「有難う御座います!そう言っていただけて嬉しいです!では用が済みましたので通常業務に戻らせていただきま…」


「ナヌリー。」


アタシはピシャんと言い放つ。

ナヌリーは不思議そうに可愛らしく小首を傾げた。


「何でしょうか?」


アタシは言ったのだ。


「ナヌリーあんたコージーが嫌いでしょ?アタシも嫌いだわ!だってアイツずっと不躾にアンタのお胸をみていたじゃ無い!気持ち悪いわ!」


ナヌリーは涙目になりながらゴッツ…エリリンに訴えかけた。


「そーなんです!あの人ずっと私にねちっこい視線で私の胸を見てくるんです!それに腕を触ってきたりボディータッチが酷いんです!」


「そーなの!?アイツ本当にクズね!」



2人は暫くコージーの悪い話で盛り上がっていたのだった










side コージー


ギルド長室から出た俺たちは男のギルド職員に先導されギルド所有の宿屋に向かっていた。

…野郎の先導なんか嫌だ!ナヌリーちゅぁんが良い!あぁ今日もナヌリーちゅあん可愛かったなぁ…良い匂いもした。あの柔らかくも弾力がありそうな胸に包まれたい!抱きしめたい!チューしたい!全身を余すことなく舐め尽くしたい…レロレロレロレレレロレロレロレロレロレロレロレレレロレロレロレロレロレロレロレレレロレロレロレロ


そんな事を考えながら宿屋に着いた。部屋に案内され入る。ベットにドカッと座りコージーは自分の未来を考えていた。


(まず王都に行くだろう…次に女を侍らせて…おっぱいワールドを作るんだ!ムチムチの太ももに頭を乗せて頭を撫でてもらうんだ…ぐへへへへぇ)



ゴージーの頭の中はピンク色一色であったのだ









ーーー捨てたサーペントがすぐ近くに迄やってきているとは知らずに















side ピィナ




アタシは今グリフォンが現れたという森に来ている。王都のギルドから要請されたのだ。

何とこの森『漆黒の森』にS級の魔物『グリフォン』が出たというでは無いか。だからS級冒険者『風霊ふうれい』の異名をもつアタシが来たのだ。


「強い魔力も感じないし本当にいるのかぁ?しかも普通に魔物もいるし…」


普通グリフォンを恐れて魔物は姿を隠すのだ。


暫く森を探索した。すると人の気配を感じたのだった。



(おかしい…今この森は封鎖されているはずだ。なぜ人の気配を感じる…)


アタシは不審に思い気配がする方へと向かった。

茂みを超えたところには何と



ーーー紐パン一丁の男がいたのだ。


(は???)


男の方もアタシに気付き此方を見る。


「……」


「……」


2人の間には静寂が横たわっていた。

男が何を思ったのか知らない方一歩此方に近づいて来る。歩いた衝撃なのか履いていた紐パンの紐が千切れた。男の立派なブツが目に入る。


「…あっ」


男の間抜けな声で現実を受け入れた。


「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」


思わず悲鳴をあげてしまった…だって生まれて初めての経験だ…出来れば経験したくなかった。


男が何を思ったのか此方に更に近づいてくる


「全裸になって快感を覚える変態がいる!!!露出狂だ!騎士団に突き出さないと!」


その言葉に男は危機感を覚えたのか焦った顔をする


「ごっ誤解だ!これはッッ!」


何が誤解なのか分からない。男はまた此方に近づいてきた。


「ろ、露出狂が近づいていた!こ、来ないでぇぇぇ!汚いのそのブツを切り落とすぞ!」


アタシは恐怖心からそんな事を口走った。男は自分のブツを切り取られる想像をしたのか元々白い顔を更に白く染めた。


「いやッ!これは!」


こうして男との攻防が始まったのだった。










ーーー暫く経ちアタシも冷静さを取り戻し男の子事情を聞いた。偶々ダンジョンに紛れ込み魔法で服を消されるとは…中々信じがたい事である。


私は警戒心を含ませた目線で男を見る。

男はそんな私の視線に傷ついたのかションボリとした顔をしていた。私はアイテムバックからサイズが合わずずっとしまっていた服を取り出す。


「取り敢えずこれでも着て無いよりはマシ…だから…早くその汚物をしまって。」


男は私から服を受け取ったのだがそれをみて盛大に顔を顰めた。


「ふ、フリフリのワンピース…」


男が絶望したような声音でつぶやく。


ーーーそうこの服は女性ものであり淡い水色で胸元が大きく開いておりリボンがたくさん縫い付けられている。至る所にフリフリのレースが飾られているエンパイアワンピースだ。


…アタシは可愛いものしかきたくないのだ。


男が再度私に話しかける。


「こ、これを俺が着るのか…」


「じゃなきゃ誰が着るのよ!私には大分サイズが大きくて着れなかったの。早く着て。露出狂じゃなかったら嫌でも汚物を隠すために着るでしょう?」


私は心の底から早く服を着て欲しいと思った。


男は覚悟を決めたのかフリフリのワンピースに袖を通す。


「へぇ…アンタ元の顔が女顔だか似合っているわよ。これなら平気ね」


本当に男に似合っていたのだ…まぁ筋肉や身長が違う為ムチムチのミニワンピースになっているのだが。私はずっと疑問に思っていたことを男に聞く。


「で?アンタここで何していたのよ?今この森は立ち入り禁止だけど?」


ーーーそう。今この森は封鎖されている。


男はキョトンとした顔をしアタシに聞いてくる


「何で君は此処に居るんだ?」


…アタシが今質問をしているのに質問されるとは…

仕方なくアタシの事情を話した。


「グリフォンが出たって言うから私はこの森の調査を依頼されて来たのよ。コレでもS級冒険者だからね!」


男は私がS級冒険者だと知るか否か褒めてくる


「凄いな君は!あのS級冒険者だなんて!」


…悪い気分では無い。寧ろ良い気分だ。


「で?アンタはここで何していた訳?」


再度アタシは男に聞いたが…


「その前に自己紹介をし合わないか?アンタだとか君だとかだと分かりにくい。俺は星辰しん君は?」


不審者の知り合いは欲しく無いが渋々名前をいう


「アンタ…星辰みたいな不審者とは知り合いになりたく無いのだけど…仕方ないわね。私はピィナ宜しく。」


男…星辰は不審者だと言う言葉にまた傷ついたのかまたしょんぼりした顔をしている。暫くしたあと男は顔を引き締めアタシを見据える。


「ピィナ…これから言う事は真実だからね?驚かないで聞いて」


もう既にアンタの格好に驚いている。


そして喋り始めた内容は驚きの内容だった。

1つ。グリフォンに遭遇したこと

2つ。そのグリフォンの生贄とされたが死の間際に進化し、得た力で倒したこと

3つ。森を彷徨っていたらダンジョンに迷い込んだ事。

4つ。ダンジョンで悪魔公爵に遭遇したこと

5つ。その悪魔公爵も倒した事。



「信じられない…アンタ1人でグリフォンも悪魔も倒しったって…」


ーーー信じられない。どちらも倒してしまうだなんて…グリフォンはまだ分かるがSS級の悪魔公爵も倒すだなんて…本当か?


そんな事を考えていたのが星辰は気付いたのか


「この魔石が証拠だ。」


…確かにこの魔石はS級とSS級の魔石だ。

コイツは確かに倒したのだ…グリフォンと悪魔公爵も。何者だ…アタシでも悪魔公爵には絶対に勝てない


「……本当みたいね…この魔石…其々含んでいる魔力がS級とSS級ね…。アンタ唯の露出狂じゃ無かったのね…」


私はしみじみそう思った。


露出狂だとまだ思われていた事を知ったのかジト目で此方を見る。

だって初印象があれだとねぇ…仕方ないじゃ無い。


私はとりあえずグリフォンは既に討伐されている事と悪魔公爵か出現した事をギルドに知らせるためコイツを連れて行くことにした。


「取り敢えずアタシと一緒に来て。アンタがグリフォンと悪魔公爵を倒したってギルドに報告しないといけないの。」


男は何故か目を輝かせ食い気味に肯定の返事をしてくる。


「分かった!ピィナ、君と一緒に町に行くよ!」


アタシは少々引き気味にお礼を伝え、アタシ達はギルドへと向かうのであった。

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