第4話

「………んっ」


目が覚める。久々に開けた目には微かな光でさえ眩しく感じる。それもそのはず、あの戦いが丸2日経過していたおり存在進化した反動はまだ残っているはずだ。


ゆっくりと立ち上がりあたりを見渡す。

雨が降ったのか湿った空気に地面は水を吸収し、そこらじゅうに水溜まりが出来ていた。


「ここ何処だっけ…」


違和感を感じたが正体はすぐにわかった


「ん?あれ?何で俺喋れてるの?えっそう言えば立ち上がるって…えっ腕がある!足がある!二足歩行だし…もしかして俺人型になっている!?」


辺りを見渡し今どこにいて何をしていたか思い出す前に自分の体の変化に気づいた。


ーーーそう星辰しんの身体は蛇のような姿から人型の魔物へと変化していたのだ。


俺は今どの様な姿が確かめる為近くにあった水溜まりを覗き込む。


(えっ!誰!)


水溜まりに写っていたのは1人の青年だった。

杜若かきつばた色のまっすぐに腰まで伸びている美しい髪に長い睫毛に囲まれている金色の切れ長な瞳。鼻筋は通っており右頬に蛇の鱗の黒い模様が刻まれている。まるで絵に書いたような美青年だ。


本当に俺か調べる為顔の角度を変える。

水溜りに写っている青年も全く同じように顔の角度を変えた。


(本当に俺だ…だが…)


俺は気づいた事が一つある。それは…



ーーー全裸なのだ。程よく引き締まっている身体と股間の間に立派にぶら下がっているブツが見える。


(誰か人間にあったらマズイ!露出狂扱いされる!)


全裸で森を徘徊しているのだ。唯の不審者か気狂いにしか見えないだろう。


そうあたふたしているうちに自分が置かれていた状況を思い出した。


「そうだ!俺グリフォンに殺されかけて…そんでもって進化して…あれ?何で生きているんだ?」


俺はグリフォンがいた場所を見る。そこには魔物が死んだ時に落ちる大きな魔石しか残っていなかった。


ーーー思い出した。俺は進化したあと超級闇魔法「終焉」をグリフォンに放ち跡形もなく消し去ったのだ。



しかし命の脅威は去ったが俺のプライドの脅威はまだ隣にいる。


「取り敢えずコージー等が持っていた荷物を漁るか…」


俺は近くに転がっていたアイテムバックを物色する。絶対に冒険には関係ない香水やらアクセサリー何かの魔法道具やガラクタ…そして全裸のお姉さんが描いてあるエロ本。


「如何してこんな碌でも無い物が入っているんだッッッ!」


俺はエロ本を闇魔法「闇炎ダークフレイム」で灰になっても燃やした。


そしてバックの奥底にシャツとズボンにローブに靴…あと男用の紐パンツを見つけた。

ーーー何で紐パンなんだ!スースーしないのか?!

てかこのサイズだとコージーの私物だよね…コージーこんなパンツだったんだ…


「無いよりはましだ…」


仕方なく紐パンを身につけ服を着てく。


ーーーこれで人間にあっても大丈夫だろう…

取り敢えず露出狂ルートは避けられた。


「さて…どうしようかな…」


星辰は今やるべき事を考える。


・自分のステータスの確認

・森を出る。

・町に行くには金が必要な為魔物の素材を集める

・今自分が森のどの辺りに居るか確認する


ざっと思い浮かべてまとめてみると四つに分けられた。先ず星辰はステータスを確認する


「ステータス」




名前 星辰

種族 大蛇オロチ

Lv. 205

性別 男

魔力 56708

体力 80867

知力 1208

属性 闇・呪


スキル 共食い 呪 超回復 状態異常耐性

資格 呪王




ーーー其処には信じられないような内容が書かれていたのだ。



「スキルがある…共食いと呪…?」


俺はスキル詳細を開いた。




共食い 敵を食べる事によって相手のスキルや魔法

無条件で習得可能にする。


呪   解呪不可能な色々な呪いを即座に創造し相手に付与できる。




ーーーヤバイな…どっちもすごいスキルだった


「敵を食うだけで相手の魔法とスキルを習得できるとか…色々な種族を食いまくったら最強になるんじゃ無いか?それに解呪不可能な呪いを付与出来るとか…チートじゃ無いか。」


俺は思わず口に出して呟いてしまう


「それにこの魔力量と体力…S級魔物に匹敵する総量じゃ無いか…」


ーーーレベルなんか100を余裕で上回っている。


信じられない…こんな力が手に入ったのだといまだに受け入れられない。

俺は半ば呆然としながらステータスを閉じたのだった。


(今のまま魔法を打ったら如何なるんだろう…)


俺は試してみたいと思い初級闇魔法闇刃ダークカッターを一本の木に向かって使用した


闇刀ダークカッター!」


ーーーこれが間違いだったのだ。


魔法は1本の木を引き裂くところか、直線上にあった木を止まる事を知らずにバサバサ切っていく。


(…何処まで効果が続くんだよ!!!)


ーーーあぁ見晴らしが良くなったな…

俺は現実逃避を始めた…だって一直線上にあった木がごっそりと無くなっているのだ。コレでは気軽に魔法が放てない。


それに魔力が身体から溢れかえりオーラとして見えている。これでは魔力を無駄に消費している上に全生物から避けられてしまう。


(まさか魔力が多すぎて困るなんて…魔力を抑さえる事を覚えるか…魔物を狩るにしてもこれでは素材採集も出来ない。だって木っ端微塵なんだもん)









ーーー当面は森から出れないようだ。













森から出れないまま1週間が過ぎた。

俺は全身から立ち昇る魔力は抑えられる様になったが未だに魔法に注ぎ込む魔力は抑えられていなかった。



「あ"ぁ!また失敗した!これで何度目だよ!」


殺した魔物の魔石をコージーが置いて行ったアイテムバックに入れていく。もう溢れかえりそうだ…


(強くなったのに未だに食べている物は木の実だなんて…切ない…)


ーーー魔力は多くなればなるほど操作が難しくなる。魔力という蛇口を勢いよくあけず、少しだけ捻るような大変面倒臭い作業だ。慣れればうまく操作出来るようになるのだが…


途方に暮れた俺は空を見上げたのだった。














また1週間が経過した。俺は漸く魔法に注ぎ込む魔力を調整できるようになっていた。


(よしっ!今日の夕飯はホーンラビットの肉だ!)


ーーーホーンラビットの首を落とし皮を剥ぐ。皮は売れる為魔石と一緒にアイテムバックにしまう。

色鮮やかな赤い色をした肉を闇刃ダークカッターで一口だいに切り分け闇炎ダークフレイムで程よく炙る。じゅうじゅうと焼ける音はなんとも食欲を掻き立てる。


(ん〜〜〜!なんて香ばしい匂い!匂いだけで満たされる!)


そして出来立てほやほやの熱い肉を口に頬張る。歯を肉に食い込ませた瞬間肉汁が溢れ出す。


(旨い!旨すぎる!口の中が幸せだ!生きててよかったぁ)


仲間やコージー達の虐待を耐え抜きグリフォンを倒した。本当に幸せなのだ。感動と嬉しい気持ちから思わず泣いてしまう。

残りの肉も食べ腹一杯になった後は腹越しらいを兼ねて森を探索する。


(随分と歩いたがまだ出口は見当たらないなぁ…)


今ここが何処なのかも分からない。俺は途方に暮れながら近くにあったゴツゴツとした崖に背中を預けたはずだった…


「えっ???」


何と崖の一部が透け俺は崖の中へと吸い込まれてしまったのだ。


「こんな事ある???普通…」


今入ってきた崖を触るがびくともしない為俺は諦めて崖の中を見渡した。中は迷路みたくなっており入り組んでいる。まるでダンジョンのようだ。


(きっとここから出るにはこのダンジョンを撃破しないといけない…)


俺は不敵な笑みを浮かべながら思わず呟いていた


「腕試しと行くか!」


俺は迷路型ダンジョンを攻略する事に決めたのであった。

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