第3話

side コージー



(はぁ…はぁ…はぁ…)


コージー等は走り続ける。とうの昔に荷物は捨てた。走るのに、逃げるのに邪魔なものは全て捨てた


(くそっ!漆黒の森はD級のはずだ!なのに何故S級の魔物…グリフォンがいたんだ!おかしいだろ!)


そんなことをコージーは考えながらひたすら走る。一緒に来たユールーズ達なんて見返らず前だけを見る。


幸いな事にここまで一切魔物に遭遇しなかった。

きっとグリフォンの魔力を察知し隠れているのだろう。


S級は上から2番目に値する厄災級の魔物だ。

ある国に数年前S級の魔物1匹が現れ人間を大量に殺し尽くし国を半壊した。全壊にならなかったのはSS級の冒険者が死闘の末に勝利したからだ。


そして今回現れたグリフォンは非常に高い知性と残虐性を持ち人はおろか同族の魔物でさえも見かけたらグリフォンから逃げる習性を持っている。


魔物が現れないことを良いのに休憩を一切挟まず走り続ける。


ーーーそして町に着いた。


町の門を潜った途端俺たちは崩れ落ちるように座り込んだ。


「はぁ…はぁ…はぁ…に、逃げ切れたかァ?」


漸く後ろを振り向くがグリフォンの気配は感じない。


(よ、良かったァ…助かったァ…屑サーペントを贄にして正解だったァ…あの時咄嗟に思い付いた俺は天才ではないかァ?)


コージーは逃げ切れた安心感から自画自賛を始めた


「コージーさん…はぁ…に、逃げ…き…ました…でふな…」


「よ、ヨーエ…生きてる!」


ユールーズとヨーエは顔に笑顔を浮かべながら俺に話しかけてくる。


「あぁ…俺達はァ生きているゥ勝ったんだグリフォンにィ!」


勝ったんだ!グリフォンに!だって逃げ切れたのだから。


「それにしてもコージーさんのアイディア最高でふたね!あの塵サーペントを囮にする事を咄嗟に思いつくだなんて!さすがB級冒険者!よっ世界一の男!」


物凄く気持ちが良い…快感を感じる。もっともっと俺を褒めろ。

承認欲求が満たされていく。


「さすがぁヨーエの男だよねぇ♡でも良かったの?あんな雑魚でも珍しい闇魔法属性を持っていたんだよねぇ?」


ヨーエの言葉で既に記憶から消えていたレッサーサーペントを思い出す。


「あぁあんな雑魚だったんだァ別に構わねェ…闇属性だからって言っても初級魔法しか使えねェんだ…アイツもあの世で俺の役に立てたことを光栄に思っているに違いねェ」


心の底から俺は思っていた。


「俺はお前ェ達の英雄様だァ!」


俺はヨーエとユールーズの命の恩人だ。敬え。

讃え、崇めよ!


「あっ!コージーさん!グリフォンの情報ギルドに売るでふよ!きっと高値で売れるでふ!」


ユールーズがそう言ってきた。確かにギルドにグリフォンの情報を売れば一儲けできるなァ

俺の頬は緩んだまま一向に治らない


「そうだなァグリフォンの情報をギルドに売ればきっと儲けられるゥ!何処かの国に善は急げという言葉があるゥ早速売りに行こう!」


俺たちはグリフォンの情報を売りにギルドへと向かうのであった。


ーーーこれが彼らの運命を変えたのであった。















ギルドに着く。

早速ギルドの美人受付嬢ナヌリーを探す。視線をギルド中に向け探す…見つけた。少し波打っている甘栗色の髪を1つに結び、長い睫毛が囲んでいる蒼色の目は人形のように可愛らしい。小動物を彷彿される雰囲気は庇護欲を掻き立てる。…何よりギルド嬢の衣服からもわかる胸の大きさ。いつかその胸に包まれたいといつも思っている

ナヌリーはこの町1番の女と言っても過言では無いだろう。

俺はナヌリーに話しかけた


「よォ…ナヌリーちゅあん♡」


ナヌリーが此方に気付き近づいてくる。あぁ今日も最高だ!さすが未来の俺の女!


「こ…こんにちは…コージーさん。どの様なご用件でしょうか…」


ぎこちない笑顔を浮かべながら俺に話しかける。あぁぎこちない笑顔も可愛い!きっと今ヨーエと一緒にいるから嫉妬してんだな!あぁ愛しいなぁ

そんなことを思いながらナヌリーちゃんを見る


「ねェ今日どうぅ?一緒にィ…ねェ?」


「ご用件が無いようでしたら他の冒険者さんの対応させて頂きたい為失礼致しますが…」


つれないところもまた良い!


「あのねェ今日はァギルドに情報を売りに来たんだァ…それもS級の魔物…グリフォンのねェ?」


「!!!S級の魔物の情報ですか!すぐにギルドマスターを呼んでまいります!」


そう言ってナヌリーちゃんはギルドの奥へと姿を消してしまった。

ーーーゴツいギルドマスターなんかより可愛いナヌリーちゃんと話がしたいのにィ





暫くしてギルドマスターを連れたナヌリーちゃんが戻ってきた。俺の目線は勿論ナヌリーちゃんの胸に向けられている。


「冒険者コージーは君であってるか?」


そうゴツいオッサンのギルドマスター、ゴッツに声をかけられる。ゴッツは元A級冒険者であり引退した今も威厳が感じられた…はぁナヌリーちゃんと話がしたい。

渋々マスターに返事をした。


「あァ…俺がコージーだァ。」


「今日はS級の魔物グリフォンの情報を売りに来たのだね?」


「そぉーだがぁ?」


「そうか。ならば一緒にギルド長室にまできて欲しい」


拒絶出来ない様な剣呑さを含ました声音で聞いてきた。こんなん拒否する方が難しいわァ


「もちろん後ろにいるユールーズ達もついてこい。」


そう言われて俺たちはギルド長室に向かった。







ギルド長室には何かの報告書だが資料だがでごった返しになってた。


ソファーに座ることを勧められた俺たちはそれぞれ座った。


「早速だが話を聞きたい。内容次第で報酬を決めよう。」


キタキタキタ!一儲けチャンス!俺は漆黒の森でグリフォンを見かけたことを伝え、命からがら逃げ帰ってきたのだと話した。勿論雑魚サーペントの事は話していない。


ギルドマスターは深刻な表情をしながらユールーズ達にも話をしていった。



「わかった。情報提供に感謝する。」


おっ終わったか?なら早く金を貰ってこんな辺鄙な町を出て王都にいってやる。

まず王都に着いたら女と遊びまくろう。

そして旨いものをたらふく食ってと妄想がとまらなかった。


ギルドマスターが俺たち一人一人の目をみた後口を開いた。


「君たちはグリフォンに狙われているかも知れない。だから一旦ギルドで隔離させて貰う。」


ーーーは?



「隔離期間はグリフォンが漆黒の森から元の天宮山に戻るか倒す迄の間。ナヌリー直ぐに王都のギルドへグリフォンが現れたと伝え最低でもS級冒険者を手配してもらえ。」


「分かりました!直ちに取り掛かります!」


ナヌリーちゃんが部屋を出る後ろ姿も可愛い!尻も完璧だ!しかし…まさかこんな事になるなんて。


「あぁそれと調査の結果君達の嘘だと判断された場合には冒険者資格を永久的に剥奪し、迷惑金十億万ゴールドを支払って貰う。もし払えなかった場合には鉱山奴隷として働いてもらう。」


ーーーそんなの聞いてない!十億万ゴールドだなんて俺たちじゃ絶対に払えない!

でも俺たちが言ったことは嘘じゃ無い。

絶対に金を貰い遊んでやるんだ。







まさかグリフォンが既に倒されているとは知らずに…蛇の恨みを買ったことを知らずに悠々と余裕をかましていたのだった。

















ーーー破滅がすぐそこまで迫っているというのに

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