誕生日は災いの引き金

私が来てから、2か月が経過した。


 第四将軍の失踪以降は特に事件も起こらないまま、ポッポズワールドでの暮らしは淡々と過ぎ去っていった。




 以外にもダンは奥手で、この街に来た時以降は私と手を繋ぐこともなかった。


 ただ、会話に関しては、気が付いたら向こうから声をかけてくることもあってそれなりに行っていた。


 この街にいる時のダンは、高校時代やポッポマンとしての荒れっぷりがウソだったかのように落ち着いていた。


 本人いわく「ストレスの原因がないから」とのことだそうだ。


 私に対しての扱いも丁寧で、欲しいゲームや欲しい漫画本を頼むと、オーリン国首相を介して購入し、私に与えてくれた。


 一度、女の子の日が来て少し苦しかった時も、お医者さんや同性の眷属を呼んでくれて、きちんと対処してくれた。


「やっぱり……キミの本質はまだ、変わっていなかったんだね」

  

 5月25日午後、私はポッポベースの自室にあるベランダから建設中のポッポ大学を眺めつつ、静かに独り言をつぶやいた。


「そういえば、来月の18日はダンくんの誕生日だったよね。いちおう、誕生日プレゼントは考えておこうかな」




■□■□■□■




『これより、第三回鉄道将軍会議を開始いたします。以下略です』


 一方そのころ、会議室では3度目の鉄道将軍会議が行われようとしていた。


「まず、前回の会議で言っていた私立ポッポ大学のキャンバスなんだけど、オーリンの建設会社の力も借りて、明日には完成しそうかな」


 テンスケが自分の担当である土木方面に関して報告を行う。


 ポッポ大学は『一般的な瑞穂の大学みたいな建造物』というダンのリクエストを実現すべく、一般的な工事会社も結託している。


 なお、ポッポマンたちは1銭たりとも報酬を出しておらず、代わりにオーリン政府の国家予算が減ることになった。


『次に、ロクノによる記憶改変実験についてですが、全項目においてかなり安定した結果が出つつあります』


「おお、そうか。どのくらいには求めていた基準に達しそう?」


『おそらく、あるじの誕生日あたりかと思われます』


「そうか……報告ありがとう」


 その後、会議は各人の自宅に関する話へと移っていき、表裏ともにダンに反発する者はいないまま、イエスマンばかりの会議はお開きとなっていった。




「さぁてと、ダンの誕生日プレゼント、どうする?」


 会議終了後、ダンだけが退室した会議室にてゴウタが議題を投げかける。


「どうするかと聞かれても、もうダンって欲しいもの全部手に入れちゃってるじゃん」


『つまり、各自であるじが貰ったら喜びそうなものを考え出し、渡す必要があるってことですな』


 テンスケとトンコが頭を悩ませる。


『ゴウタさんは確か、あるじとはリンに次いで長い付き合いでしたよね。あなたなら、何を贈りますか?』


「そうだねぇ……あいつは、わりとさりげないプレゼントでも喜ぶんじゃあないか。きっと、誕生日を祝ってくれること自体に喜んでくれるだろう」


「なるほど!つまり敵対者の首とか宝石とかじゃなくても良いのですね」


「ノリオの言う通りだねぇ。誕生日ケーキと誕生日パーティが一番無難なプレゼントだと思うよ」


 会議室の中で、どんどんと練られていく誕生日パーティの計画。




 それと同時に、世界各地でポッポマンに取り入りたい各勢力が、物騒なプレゼントを考えつつあった。

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