第四将軍、失踪
「箱根ダン……とても言いにくいことなんだが……ついさっき、ヤクマルの気配が無くなってしまった」
4月3日夜20時、ゴウタはヤクマルの気配を感知できなくなった。
『ポッポマン様大変です!ヤクマルさんと電話がつながらなくなりました!』
続いて、瑞穂にいるポッポマン大好き倶楽部から、音信不通の報告。
「ああ……なんてことだ……誰が……誰がやったんだ!」
箱根ダンは執務室の中でうろたえる。
なぜなら、自分が4番目に信頼していた部下を失ってしまっては、当然の反応だろう。
「……最近のヤクマル。サイコが生きているという目撃証言の検証ばかりしていたからさ……密かに生きていたサイコがやったんじゃないの?」
「確かにそれはありうるねぇ。アイツは乱戦中に気配ごと姿を消した。でも遺体はなかったし、そういう記事もなかったねぇ」
そう言いつつ、スマホのニュースを確認するゴウタ。
「……セイサクが仮に生きていたなら、もう犯人はセイサク以外あり得ないだろ」
「殺害動機は、口封じってとこかな」
「とりあえず……明後日の昼までに準備をして、セイサクを探そう。そして見つけたら……」
箱根ダンは興奮のあまり、変身する。
『ぶっ殺す!心も体もボキボキに折ってなぁ!』
ポッポマンが捜索の決意を固め、周囲の眷属たちは跪いて服従の意を示した。
そして、4月5日。
ダンとゴウタ、そしてトンコの3人はステルス状態になったヘリを用いて野良県にある大好き倶楽部のテントに現着した。
『ゴウタさん、サーチの調子はいかがですか?』
「うーむ。周囲500メートルには動物っぽい気配はなさそうだね。あと、オレの能力の正式名称は『超感覚』で『サーチ』ではない」
それから、ゴウタは山中を駆け巡り、所々で人間の気配を探した。
「ヤクマルの気配が消えた時間帯的に行けそうな場所はだいたい行ってみたけど……マジで見つかんないねぇ」
『洞窟とかにいるという線は』
「それはないね。確かに、この周囲に洞窟はいくつかあったけど、いずれも人の気配は感知できなかったよ」
『ゴウタの超感覚は、洞窟にも対応していたのですね』
「これはもう……諦めた方がいいよな」
ダンが珍しく、『諦め』という言葉を口にする。
「まあ、そうだねぇ。失った物いつまでも引きずるより、欲しいものを手に入れることに全力を注いだほうがいいんじゃーないか?」
「そうか。じゃ、帰ろうか」
こうして、箱根ダンは目的を果たせないまま帰路に就くことになったのであった。
その日の晩、トンコのテレパシーによって、全ポッポマンの眷属の頭の中に鉄道将軍の人事異動が告げられた。
脇田ヤクマルは行方不明になったことにより、鉄道将軍の地位は自然消滅。
代わりに、ポッポマン大好き倶楽部のリーダーである綾瀬ゴウタが新たな第四将軍として任命されることになった。
結果として、箱根ダンは松田セイサクと脇田ヤクマルの消息を掴むことは無かった。
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