鋭い優しさ

残月

短編

 僕は明日、自殺をしようと思う。


 それだけだと面白くないから、それまでの記録を残しておく。


 つまり、遺書だ。


 じゃあ、今から死のうと思った動機を残していこう。


 僕、本村恵斗ほんむらけいとは公立高校に通うただの高校生だ。


 何かに優れているわけでもないし、特不器用なわけでもない。


 家庭環境も良好で、なんなら良すぎるほどである。


 じゃあ何が不満なのか。


 それは学生の本業…学業についてである。


 僕には出来のいい兄がいる。


 運動神経抜群で、絶大なるカリスマ性。


 勉強も人一倍熱心に取り組んでいて、テストの順位も一桁ばかり。


 対して僕は部屋にこもってスマホばかり触り、テストは平均よりもやや下。


 そんな僕に両親が叱るということもなく、同じように大切にされてきた。


 でもやっぱり、出来のいい兄がいると、どうしても劣等感を抱いてしまう。


 兄の言葉、親の言葉がぐさりぐさりと刺さるように感じるほど。


 そんな中、兄は僕に言った。

『俺より才能あるから頑張ればいけるって!』と。


 そんな言葉は、僕の傷口を広げ、劣等感をより頑固な物にした。


 その時、優しさというのは、頑張ったからこそ力を発揮すると知った。


 まだ叱られる方が良かった。だって自分自身に後悔ができるから。

 

 まだ失望される方が良かった。見返してやろうって思えただろうから。


 もしかしたらそれは、親への当てつけなのかもしれない。


 許してください。こんな僕を。


 あなたたちのもとへ生まれて来て、本当に良かった最悪だ

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鋭い優しさ 残月 @askgo

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