第55話  創世神との対話

「なんで、天上界にまで呼ばれたんだ!?」


『アンドレアの娘か、我にも今一つ、意味が分からぬのだが』


 アンナレッタとアーロンは、顔を見合わせた。


『何か、意味があるのじゃあないのか?」


『我の相対神のディハルドが、人族に忘れられて久しく、我の知れぬうちに北の地へ行ってしまった。それは、かなり前のことでなぁ……

 だが、父神は、それがお怒りらしいな。光と闇のバランスを崩すなと』


「それは、イリアスのせいじゃないじゃん!!」


 アンナレッタは怒鳴った。


「こら!! 創世神!! 光の神殿を、イリアスを私達のもとへ帰せ!!」


 アンナレッタは、自分の身体の大きさが十倍のパキュア創世神に向かって、

 魔法を帯びた大声で怒鳴った。


 リカルドも少なからず、力を持って行かれていた。


{我の夢の中に入って来た、愚か者よ。我の事は誰に聞いた!?}


「遠い親戚のおじだよ」


{ほぉ、あの坊主の知り合いか}


「それより!!」


 アンナレッタは、イライラしてきた。


{そなたは、昼と夜のバランスが崩れたら、どうなると思う!?}


「日は沈んでも、また昇るし、月もまた昇る。バランスなんて崩れない!!」


{いや、我のつくりし、静寂をシンボルとした神は、まるで忘れられてしまっている}


『それは、あのような姿に造りし、あなたのせいでもありますよ』


 アンナレッタは、アーロンを振り向いた。


「どんな奴だ!?」


「一つ目の恐ろしい怪人の姿で、伝わっていますよ」


「イリアスと違い過ぎるのではないのか!?」


「光の神は、もと精霊王ですからね。人族に近い種族です」


「そうなのか?」


 もう一度、アンナレッタはイリアスを見た。

 確かに、ほんのりと銀色に輝いているが、見た目は均整の取れた人族である。

 見栄えで信仰が広まるわけではない。

 イリアスは、人が大好きで、彼を慕う人も次第に多くなってきただけだ。

 それは銀の森の発展とも繋がっている。


「納得がいかないな!!」


 アンナレッタは、もう一度創世神に向かって叫んだ。


{威勢の良いイリアスの系譜の者だな}


「いま、そのディハルドって奴が何かしてる訳ではないんだろ!?」


{光の力が増すと、魔族が多く生まれるのだ。そなたは、これをどう思う!?}


「それこそ、人間の冒険者の出番じゃん。魔族なんかいくらでも退治してやるよ」


 アンナレッタは創世神に向かって、自信たっぷりに言った。

 頭上では、リカルドがうんうんと頷いていた。


 そして、ディハルドが何か事を起こしたら、イリアスが抑えることで話がまとまった。


{仕方あるまい、迎えが来たのでは……我も眠りをこれ以上、妨げられたくないからな}

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