第53話 神剣の間は……
リカルドが、<おう!!>と、右指の親指を立てたので、アンナレッタは満足してもう一度笑いかけた。
「神剣の間にご神体の神剣はあったか!?」
「気付きませんでした」
神剣の間とは、いわゆるご神体を置くところだ。
イリアスはご神体となる場合、『アフレオス』という神剣の姿を取った。
アーロンを蹴飛ばす、アンナレッタ。
「痛いですよ~ 本当に、姫なんですか~!?」
「悪かったな!! 男の従弟と間違えられたことがあって!!
あれだけ、派手に騒がしまわって、神官が神剣の間を確認しないとは。
お前、神への忠誠心を問われるぞ」
アーロンは言葉に詰まってしまった。
そして、やっと言った言葉が、
「アンナ様こそどうしていたのです!?」
「私か!? 私は父以外の事はどうでも良いんだ。
だから、真っすぐに父のいるであろう、貴賓室に来たんだ」
しれっと、神官も巫女も心配ではなかったように言うので、アーロンは少し腹が立ってきた。
反論しようと口を開こうとした時に、リカルドが言った。
<とにかく、神剣の間とやらへ行ってみようぜ>
「おっ、そうだな」
アンナレッタは、アーロンを無視して歩き始めた。
少し拗ねたアーロンも、一人残されたのでは寂しい。
直ぐにアンナレッタの後を追った。
結論から言うと、神剣の間はカラだった。
後年は、神剣の間にはいくつかの火の魔法使いによる魔法剣が奉納されるが、この時代には、そんな風習も無く神剣アフレオスも無かった。
「神剣はここにあったのは、確かなんだな!?」
「確かですよ。毎日掃除していましたから」
アーロンは自信を持って言った。
その言葉にアンナレッタは、大きな溜息をついた。
「我らの神は、気まぐれだぞ。気ままに人の世界にも紛れるし、同衾もするし」
アンナレッタの言葉に、真っ赤になってしまったアーロンである。
<なぁ、同衾てなんだ~~!?>
リカルドが、頭上から聞いて来た。
「お前、いくつだ!?」
<16くらいかな~?>
アンナレッタは、大笑いである。
「お子ちゃまだったんだな、リカルドは」
<だから!!>
「人間のすることだ。肉体の無いお前たち精霊には関係のない話だ」
<でも、神は人間とするんだろ!?>
リカルドは納得がいかない。
「だから、子作りするんだ。運が良ければ、我が家のように血筋を残すことが出来る。聞くところでは、運が良くても三代か、四代で終わってしまうことが多いそうだ。神の系譜は残すことが難しいそうだ」
<なんで!?神がわざわざ人と交わるんだよ。>
「それは、私も知らん」
アンナレッタは、アーロンを見た。
アーロンは、カラクリ箱をひっくり返して六弦のハーブを手に取っていた。
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