第49話  ポカロの実

  アンナレッタは島の中央部ある大木に向かって走り出した。


「アンナ!!」


 リカルドも追いかけてきた。


 世界樹と呼ばれるだけあって、大きな樹である。

 緑色の葉の裏にところどころ、銀色に光る実らしきものがあった。


「あれのことかな?」


 一番、手前の物をもぎ取ろうとして、ルースティリアに怒られた。


「一番熟したものをお取りください。半年以上も前なら、かなり熟してるはずですわ」


「ここは時間のない、空間のはずだろ!?」


 アンナレッタが疑問をぶつけると、


「ええ、この空間には存在しません。でも、世界樹は成長して新たに実をつけますわ」


「何だよ!! そのヘンな理屈!?」


「事実です」


 ルースティリアは真顔であった。


「熟れてるのは、食べごろだからギンギンに光ってるやつかな!?」


 アンナレッタの目にはもう、目を付けた実があった。


「リカルド、私をあそこまで飛ばせてくれ。」


「承知」


 リカルドは、アンナレッタを抱き上げて飛ぼうとしたら出来なかった。

 それどころか、アンナレッタに引っ叩かれた。


「何処を触ってくるんだ!!」


「あれ?」


 思うように力のでないリカルドは、戸惑った。


「もう良い、呪文で何とかする!!」


「待て、俺が行ってくるから」


 リカルドは、助走をつけてジャンプしたら、宙を浮いていた。


「魔法使い並みだな」


「俺は、風の使い手だったんだよ」


「へぇ、お前も魔法使いだったんだな」


 アンナレッタは、初めてリカルドが人間の時のことを聞いた。リカルドは、精霊になったことを受け入れ、今まで過去を言わすにいた。

 飛んでいたら、だんだんと身体が軽くなってきた。

 人間だったことが思い出されてきた。

 苦労して、アンナレッタの言うギンギンに熟れた実を取ると、そこから地上に華麗に着地した。

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