第48話 アナイス婆
『アナイス婆に知らせましたわ。婆が路を開いてくれるそうです』
少女が、戻ってきて言った。
『そうか、有難い』
しばらくすると再び水面が揺れて、しわがれた声が聞こえて来た。
『飛び込むが良い』
その声にビビったアーロンを先に、泉に突き落とすとアンナレッタは、火の王に再び問うた。
「本当に水は大丈夫だな!?」
<我は火の王ぞ、そこらの下位のものと一緒にするな>
「そうか……では、行くぞ」
アンナレッタは、最後にリカルドの顔を見て泉に飛び込んだ。
幻夢界___
水の中で一瞬、気を失った。
気が付くと、小さな湖の中の小島にいた。
「酷いですよ!! アンナ様!! 急に押すなんて!!」
「いや、溺れないか確かめたくてな。ちゃんと、沈んで行ったから安心したぞ」
「人の身体で実験しないで下さいよ!! それより、誰を連れて来たんです!?」
アンナレッタは、ポカンとした。
「何を言って……」
「ここが幻夢界か~銀の森の雰囲気に似てるな」
その声にアンナレッタは、ビックリして振り向いた。
「おま……」
「どうかしたのか!? アンナ。変な顔をして」
アンナレッタの前に金髪で青い色の瞳の見たことのない騎士の格好をした少年が立っていた。
「リカルドか!?」
「何を言ってるんだよ、そういえば、いつもお前を見下ろしてるのに、おかしいな」
アンナレッタは、リカルドに抱き着いてみた。
「お、おい!?」
「分からんが、今のお前には触れるぞ!!」
リカルドは 顔を赤らめた。
「どういう事なんだ!?」
『お前さんに、人間の痕跡が強い証拠だろうて』
先程、泉から聞こえてきた、しわがれた声が聞こえてきた。
そちらに振り向くと、年齢が分からないほどの老婆と、腰までとどいた銀髪と銀色の瞳の正統派の美少女が、後ろに控えていた。
『ルース、お前のご先祖様のようだな』
『婆様、そうですの?』
アンナレッタは、婆に聞いた。
「婆、銀の森のアンナレッタ・エル・ロイルだ。突然の訪問の非礼は謝罪する。天上界に行くために、ここ生えてる樹のポカロの実というものが欲しいんだ」
『天上界とは、穏やかではないな。現世で何が起こっているのだ!?』
「光の神殿がご神体ごと、消失したんだ。半年以上も前に、突然にだ」
『ほぉ、ご神体ごととは……中にいた神官や巫女もか!?』
アナイス婆は、真顔でアンナレッタを見た。
「私の父も一緒だ」
アンナレッタは頷きながら言った。
幻夢界は、時間が存在しない空間らしい。
「ポカロの実は?」
『世界樹の木の実のことさね』
「世界樹?」
婆は、小島の中央に立っている大木を指差した。
『木の実を食べると、創世神の夢に入っていけると伝わっておるな』
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