第47話  水鏡の術

アンナレッタとアーロンは、火の王の助言で、ゴンガガ地方を離れた。

ナムラ砂漠の小さなオアシスに、リカルドは着地した。

ここのオアシスの泉は、ほとんど枯れかっかていた。


アンナレッタはそれを見て、盛大な溜息をついた。


「ここも呪文かよ~~!!」


「アンナ様。この五年の勉学の成果を試す時です。頑張りましょう!!」


アーロンが励ます様に言うと、アンナレッタはとても嫌な顔をした。

アンナレッタは、泉に向かって水を呼ぶ呪文を唱えた。


呪文に呼応するように泉に、水がコポコポと湧いてきた。

半刻で小さな泉を満たすだけの水が溜まった。


「じゃあ、幻夢界へ向けて水鏡の術をかけてみる」


「アンナ様、古代語で話してみてくださいね」


「どうしてだ?」


アーロンがアンナレッタの問いに答えた。


「どの時代に繋がっているか、分からないからですよ。古代語は、精霊とも竜族とも話の出来る言語です。一番確実に話が通じます」


「苦手な事ばっかり言ってくるな!!」


アンナレッタはチョップでアーロンの頭を叩いた。


「痛いです~」


アンナレッタはアーロンが少し、離れた所へ逃げて行くのを見て、泉に向かって古代レトア語で話始めた。


『レイリートン、レイリートン(古代レトア語で幻夢界の事を指す)

こちらはアンナレッタ・エル・ロイルだ。誰かいないのか?』


しばらく後に、水面が揺れて、孤を描いた。

そして、それが崩れて美しい少女が現れた。


『初めまして、わたくしはルースティリア・エル・ロイルですわ』


『えっ!? 私も、ロイル家の者だ!?』


『あら、そうなのね。ご先祖様かしら? 子孫なのかしら? どちらにしても、ここではそんなに珍しいことではありませんよ』


『そうなのか?』


『はい、それより、ここでは外界との接触は、最小限にしないといけません。早く要件をおっしゃって下さい』


『用があって、幻夢界に行きたいんだ。水の路を開きたい。そちらの受け入れを頼みたいんだ』


『まぁ、それなら婆の方に直接、言って欲しかったですわ。お待ちくださいませ。婆にみちを開けても良いのか聞いてまいります』


ルースティリアと名乗った少女は水面から消えた。

エル・ロイル姓を名乗って、ルースティリアと言う名前。

おそらくは、自分と同じ本家に生まれた、銀髪と銀色の瞳の女の子に違いない。

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