第40話  風の精霊との対話

<アンナ!!>


 リカルドは叫んだ。


「アンナ様、見事に落ちちゃいましたね。追わなくて良いんですか!?」


<うるせえ。分かってらぁ!! だけど、この結界にハマちまって動けないんだ!! クッソ~~!! なんで、契約者のアンナが落っこちて、お前が残るんだよ!!>


「すみません。役立たずで……リカルドさん、離れるなら出来ると思いますよ」


 リカルドはドキリ。

 なんで、アーロンがリカルドの名を知っているのか!?

 アンナレッタでさえ、アーロンの前では、風の騎士と呼んでいた。


 <お前……何で、俺の名前を……?>


 アーロンはニッコリ笑って、半透明のリカルドを見た。


「前に西域に行ったでしょう。あの時にお二人が喋っているのを聞いてしまいました」


<そうなのか? でも、俺はアンナ以外の奴とは契約はしないからな>


「大丈夫です。僕には魔法の力はありませんから」


 リカルドは抱き抱えている、アーロンをしばし見た。



<それで? どうしたら良いと思うんだ?>


「前に進もうとすると、身体が搦め捕られますよ。少し、後退してみましょう」


<了解、やってみる>


 後ろに戻ったリカルドは、結界の縛りから抜けることが出来た。




 一方、アンナレッタは__


 勢いよく落下して行った。


「おい!! リカルド!! 風の騎士!! くそ!! この付近の風が邪魔してるな!! 仕方ない、呪文かぁ……」


 アンナレッタは、風を呼ぶ呪文を唱えた。

 すると、落下の速度は落ちて行き、ふわりと空中で浮かんだ状態になった。

 そして、淡い金髪に見える髪の半透明の精霊がやって来た。

 身なりがが、昔の王族のようなドレスを着ていたことから、上位の精霊なのだろうと、アンナレッタは思った。


(思ったより、上位の奴を呼んじゃったかな……)


 アンナレッタが、ボヤいていると、精霊が話しかけてきた。


<あら、毛色の変わった魔法使いさんね!? ここから先は竜族の聖域よ。用を言いなさい。事と次第では、助けましょう。でも、お前が無礼な冒険者なら、今すぐにこの谷底に叩き落としてやるわ>


「物騒なことを言うな!! 私はこれでもエル・ロイル家の娘だ。竜族のおさに聞きたいことが合って来た。会わせてくれ」


<まぁ、崇拝する方の血筋の方でしたのね?この領域は風竜の巣よ。世界には地竜も火竜も水竜もいるけれど>


「ここ以外の竜の居場所を知らないんだ。ここの場所の口外はしない。約束する。どうか、風竜のおさに取り次いで欲しい」


<承知しました。風の娘たちを残しておきます。そこでお待ちください>


 自らを、風の貴婦人と名乗った精霊は、風竜の巣の方へ去って行った。

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