第39話  ティエリ山脈へ

 アンナレッタは、北西の方向に向かって風を吹かせた。


「風の騎士、もっと北だ。大山脈の麓の近くだ」


<了解>


 この大陸には、南北に分断する大山脈があった。

 人の足では越えることは出来ないと言われている。

 北の国と南の国々とでは交易も無く、南の人間は、北方の人がどんな暮らしをしているのかさえ知らなかった。


「あの大山脈の向こうには、どんな世界が広がってるんでしょうね?」


 アーロンは、しみじみ言った。


「こっちと、変わらないだろ?」


 アンナレッタは、興味がなかった。


「でも、イリアス・ロイル神に敗れた、ディハルド神は彼を崇める人たちと、北の国に行ったと、我が家の古い記録にありました」


「じゃあ、北方はディハルド神が崇められているのか?」


「どうでしょうか……だったら、ディハルド神は幸せですね。

 こちらでは、かの神は光の神に追われたも同然でしたから……」


<お前、今はロイルの神官なんだろ!?ディハルド神の回し者か!?>


 リカルドは、呆れるように言った。

 ここはロイル神の世界だ。

 リカルドは、ロイル神の眷属の精霊で、アンナレッタはエル・ロイル家の姫だ。


「すみません。僕の実家が、ディハルド神を祀る家なので」


「まぁ、気にするなよ。お前、その年で光の神殿に所属って、よっぽど将来を期待されてるんだな」


 ティエリ山脈のに着いて、山間を飛んでいたら突然、大きな結界にぶち当たって、リカルドは対処出来ずに、その場で止まってしまった。


 一瞬のことで、アンナレッタも思考が止まっていた。


 と、気が付いたら、アンナレッタは真っ逆さまに地上に向かって落ちていった。

  








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