第37話  リカルド、パワー全開

<いいか!? どうなっても知らねぇぜ!!>


「何を言ってるんだよ!!お前が助けるんだよ」


<知るかよ!! 行くぜ!!>


 リカルドは、川辺に立ったアンナレッタを転がすほど突風を吹かせて、直後に力を全力で上空にアンナレッタを運ぶ事を何度も頭の中で、イメージした。


<行くぞ!!>


「いつでも」


 リカルドはまず、アンナレッタに向かって、突風を吹かせた。

 さすがに五歳ならば、簡単に転がるだろうが、見た目12歳くらいのアンナレッタでは脚力が違う。

 リカルドは、力を徐々に上げていった。

 アンナレッタは、転がりこそしなかったが、徐々に川に近付きつつあった。

 そして、とうとう川に落ちた。


 そして上空に飛ばした。

 それこそ最大の力で。

 アンナレッタの小さな体は、川から浮き上がり、上空へと消えていった。

 リカルドもその後を追った。


 どんどん上昇して行ったが、天界らしきものはない。

 雲を突き抜け、リカルドが力の限り上空まで来た。


<おい……もう、これ以上は無理だぞ>


「そうだな。天上界は天にはないようだ」


<気が済んだか?>


「ああ……」


 リカルドは、ホッとした。

 アンナレッタは、悔しそうに言った。


 落下速度は、上がる時よりも早い。


「あれがタナトス大陸かぁ……大きいな。大山脈も見えるな」


<そろそろ、着地準備しとけ。一応川の一歩手前で着地する予定だが、ズレるかもしれねぇ>


「お前なら、出来る」


 アンナレッタの気楽な言葉に、リカルドはフッと息をついた。


<叶わないな>


 いよいよ地上が近付いて来て、リカルドはアンナレッタの身体を抱えるように落下した。


 川が見えて来た。

 だんだんと、落下速度を抑えて川の真横にアンナレッタを着地させた。


「さすが、リカルドだな」


<もう、難題はパスだぜ>


 リカルドは、かなり本気モードで言ったが、アンナレッタが気にしてる様子は無かった。

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