第35話  風の奥方と契約した理由

「それで、俺が目を覚ますと知らない一族の者と、透き通った奥方が泣きながら、俺を見てたんだ」


「良く助かったな。おじ上。助けてくれた人が分からないのか!?」


「ああ……綺麗な銀髪をしていたから、一族の者だろうう。

 だけど何分にも、五歳の子供だからな。俺が気が付くと、もう大丈夫だと消えてしまったんだ。

 帰っても、誰に礼を言えば良いのか分からないって親にも叱られたな」


「おじ上の所の親って……子供が死にかけたのに……」


 アンナレッタは、笑いたいのを我慢していたが吹き出してしまった。


「まぁ、アンナも大して変わらんだろう!?」


「いやいや、父上は私に嫌味なんて言ってこないよ」


「そうか、アンドレアはまだ常識人で良かったな」


 そしてアドリアンは、一息ついて言った。


「銀色の人が立ち去る際に奥方を、酷く怒っているように見えたな。」


「ん!?」


「その人が立ち去った後に、風の奥方が俺に謝って来たんだ」


 奥方が言うには、さっきの突風は契約者を亡くして、悲しんだ奥方の銀の森への帰還だったらしい。


「ちょっと、待った!! おじ上!!」


「なんだ!? アンナ」


「おじ上は、それまで精霊が視えていたのか!?」


「いや、覚めてからだな。俺は創世神に魔法の力を願ったんだよ。

 そして、奥方から罪滅ぼしとして、契約の申し出があったんだ」


 アンナレッタは、意外な奥方の過去を知った。


「家では、溺れたことを叱られただけだったが、親には風の奥方が視えてないんだよ」


「なんで!?奥方だろ!!最高位の精霊じゃん。」


「それが奥方の凄い所さ。姿を隠すことも出来るんだ。」


「へぇ……」


「でも、見える奴には見えてしまうだろ!?五歳のガキが風の奥方を連れてるなんて。神殿には速攻でバレたね。どうして急に魔法が使えるようになったのか、聞かれたよ。でも、俺は創世神の事は誰にも話さなかったぜ」


 アドリアンは胸を張って言った。

 アンナレッタは、不思議そうに言う。


「なんで、今話してるんだ!?」


「わからないが、なんとなく……だな」


 アドリアンは一緒に夕食をすると、実家の方へ帰って行った。


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