第34話  五歳のアドリアン

 30年前___


 アドリアンは、エル・ロイル家の遠縁にあたる夫婦に、待望の第一子として生まれた。

 そして、両親をガッカリさせた。

 彼の薄い金髪は、両親とも違っていた。

 瞳は銀色だったが、魔法の力も持たず、両親は本気で、銀の森の外の世界にいる縁者に養子に出そうと考えていたそうだ。


 その縁者が、せめて幼いうちは、実の親の元で育った方が良いだろうと言ったくらいだった。


 彼が三歳の時に、銀色の髪と灰色の瞳の妹が生まれた。

 妹は大地の力が使えた。

 花を綺麗に咲かせたり、人の痛みが分かったりと幼い頃から、魔法の力を発揮していた。


 幼いながら、力を使う妹のアシャンティを見ていて、アドリアンは瞳が灰色でも、魔法の力を持っていれば良いのか、と思うようになった。


 五歳になったアドリアンは、魔法書を読み漁るようになった。

 父には、七歳になれば養子先に行くのだから、無駄な事はやめろと言われてしまった。

 聞こえないふりをしながら、アドリアンは魔法書を読んでいた。

 家の中では五月蠅いので、森の奥に来ていた。


 ある日、エル・ロイル家の本家の奥まで来ていた。

 そこから奥には池があって、外の世界に繋がる川もあった。


 リドムの銀の葉はキラキラと輝いて、一年中枯れない。

 魔法書をここで読むと、古代文字がすんなり頭に入ってきた。


 古い本である。

 閉じ目がほつれていた。

 急に突風が、吹いて来た。


 この風で、アドリアンは本ごと転がった。

 コロコロと転がって、川に落ちた。


 アドリアンは勿論、泳げなかった。


 気が付いたら、ふわふわとした不思議な感覚の場所にいた。


{珍客だな。我の夢の中に現れるなど……}


 アドリアンは自分の20倍はあるであろう、頭が獅子で、身体が人のような物体に問われた。

 不思議に怖さはなかった。


「あなたは誰!?ここは死んだ人の行く国なの!?」


{面白い人族の子供だな。名は聞くよりも先に名乗るものだろう。

 まぁ、良い。我が名はパキュア。万物を司る創世神だ。

 我は今、眠っておる。ここは我の夢の中だ}


「僕は、どうなるの!?」


{そうだな……イリアスの血筋の者か……大きな力働いて、そなたをここまで飛ばしてしまったのだろうな。助けは来ておる。大丈夫だ。もうすぐ元の世界で目覚めるだろう}


「本当!?」


 アドリアンは、素直に喜んだ。


{だが、せっかく我の元まで来たのだ。何か望み事はあるか?人族の子供よ}


「僕、魔法が使えるようになりたい!!」


{力は、そなたの内にある。引き出してやろう}


 そう言うと、創世神はアドリアンの頭に手を伸ばしていた。


「創世神様!!消えていきます!!」


{そなたが、目覚めかけているのだ。ああ、そうだ。我の事は、あまり口に出すでないぞ。あまりな}


 パキュア創造神がそう言った言葉を最後に、アドリアンは気が遠くなった。







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