第32話  遠い血筋のアドリアン

「アンナレッタ!! 久しぶり!!」


「アドリアンおじ上。来てたのか!?」


「俺なんか末端の血筋なんだが、ロイル姓を名乗っている以上仕方ないさ」


 うすい金色の髪で、銀色の瞳をしているアドリアンは、アンナレッタの亡くなった曾祖父の孫だった。自身は銀の森の外に居住しており、数年に一度、当主の館にやって来て、アンナレッタの話し相手になってくれた。


 銀色の髪は持っていなかったが、アドリアンは他の一族の者とよく似ている。

 ただ、銀の髪を持っていなかったというだけで、他の一族の者は、アドリアンをロイル姓を名乗らせなかったという逸話もあった。


 だが、アドリアンもアンナレッタに負けず劣らず、魔法の力は物凄くて、当時の光の神殿の大神官がアドリアンに頭を下げて、ロイル姓を名乗って良いから、一族に名を連ねて欲しいと言って来たくらいだった。


「アンナはドーリアとヴァーレンに、行って来たそうだな。何か分かったのか?」


「相変わらず、風の噂を集めるのが早いなぁ。う~ん、人智を越えた力が働いたってことしか分からないな」


 アンナレッタは、風の奥方のもとの契約者だった、彼に香草茶を入れて出してやった。

 同じような思いをしてるので、アドリアンはアンナレッタの事を気にかけていてくれた。


「面構えの良い、風の精霊と契約したな。」


「おじ上こそ、もう精霊と契約しないのか!?良い腕してるのに」


「調子に乗って、冒険者パーティーに入って、無茶苦茶に暴れて奥方を怒らせてしまったからなぁ……」


「奥方は何人も、命を落とした契約者を見てるんだよ。私でも契約してくれないもん。魔法の力が強すぎるって!!」


「それはそうだ、アンナと奥方が組めば、世界が吹っ飛ばせるからな。

 俺は今度は、水の精霊でも探そうと思ってるんだ。

 食いっぱぐれが無さそうだからな」


 アンナレッタは、大笑いしているアドリアンを見て、気楽でいいなと思った。

 アドリアンは、ロイル家本家からは、遠いが銀色の瞳を持った一族の一人である。

 本人は、一族から追い出されそうになったのだ。

 だから、一族愛あいみたいなものは、持ってないらしい。

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