第29話 精霊族の歴史
奥方は低い声で話し出した。
<もう、数千年も前のことですわ。あの頃は世界も混沌としておりました。その中で、わたくしたちの王は、人間にとても目をかけていました。
仲間の中には、人間と交わる者もいましたわ。
でも闇の種族が攻めて来たのです。魔族は、我々をとても憎んでいました。彼らの神であるはずの闇の神が、人間を守護し始めたのです。彼らは、人間を憎み精霊族を憎みました。
それを憂いた王は、人族と混じった精霊族をティエリ山脈の奥地に逃がして、結界で隠しましたわ。
そして王は、天上界に行くことにしたのです>
「天上界!? 万物の神のいる所か!?」
<そうですわ。創世神とも言いますわね>
「それで!? 奥方も行ったのか?」
アンナレッタは興味深く聞いた。
<はい、王と共にセレンシアを出て来た精霊は、銀の森を見つけ、王に何とか闇の神に匹敵する力を得ることが出来ないか考えました>
「それと今、奥方に身体が無いことに関係してるのか!?」
アーロンは、黙っていた。
アンナレッタにも、奥方の言おうとしてることが分からなかった。
<アンナ様、我ら精霊は存在自体が魔法のようなものでした。
だから、器である肉体にも力が宿っていたのです。
そして、王に進言しましたわ。喜んで、器の力を捧げますと、皆同意見でしたわ>
「祖神は、それを受け入れたのか!?」
奥方は頷いた。
<わたくしが、最初に王に風の力を捧げましたわ。そして次々と……結果、王は、今までの数十倍の力を得て、天上界に行きました。そして、創世神様に光の神と認められたのです>
「それが、ロイルの神の成り立ちか」
<そう言う事になりますわね。創世神様は、光の存在として、我ら精霊や竜族も眷属に置きましたわ、それより以前は、世界が闇に覆われていた時代には、闇を守護する神をお創りになったそうですわ。闇の神は、闇を守護する神ですから、姿のことは考えなかったのでしょう。見たものは、ショック死するほどの姿だとか!? それで、だんだんとディハルド神を信仰する者はいなくなっていきましたわ>
アンナレッタは、精霊が肉体がないのは分かったが、闇の神については初めて聞いた。
「ディハルド神の信仰は、砂漠の民に『セナの花の信仰』として細々と伝わっています」
アーロンの言葉に、風の奥方は複雑そうな顔をした。
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