第五章 久々の銀の森

第28話  風の奥方

風の奥方と言われる精霊は、創世の時に生まれた最高位の精霊である。

 生まれた時リカルドは、気が付いたら奥方の寝床にいたのだ。


 銀の森に帰ったアンナレッタは、屋敷の近くのリドムの樹を探した。


「お~い!! 風の奥方、アンレッタだ!! 出て来てくれ~!! 聞きたいことがある!!」


 アンナレッタが、大声で叫ぶだけで下位の精霊は転げまわった。


 <アンナ~自覚も持てって~>


 リカルドがアンナレッタに言った。


「ん!?」


 <奥方の一番のお気に入りの樹を自分でぶっ壊しておいて、自覚がないのかよ!!>


「あれは、お前の力でもあるぞ。」


 アンナレッタは、シレッと言った。リカルドはアンナレッタの頭を殴ろうとするのだが、透けているので、空振りしていた。

 そんな二人を見て、アーロンは羨ましく思えた。


「アンナ様は精霊との絆が強いのですね。」


「そうか!? 私とリカルドは相性が良いのか!!」


 アンナレッタは嬉しそうである。リカルドは辟易していた。

 どう考えても、精霊として生まれたての頃に、うっかり名前を言って強引に契約をされてしまったのだ

 それ以来、アンナレッタには振り回され通しである。


<精霊として、良い面構えになってきましたこと>


 アンナレッタが、奥方の寝床の古木に近付いた時に、リカルドの耳に聞こえて来た。

 風の奥方の声だった。


<アンナ様、何か御用ですの?>


 奥方は、古木の太い幹に気怠そうに、横たわっていた。


「奥方には昔、身体があったのか!?」


 奥方はアンナレッタの唐突な質問に、彼女のもとまで降りて来た。


<アンナレッタ様……どうしてそのことを!?>


「セレンシア村を知ってるか!? そこへ行ってきたんだ」


 奥方は明後日の方を見て溜息をついたように見えた。


<では、イリアス様が精霊王であったことを、知ったのですわね>


 アンナレッタは頷いた。


<そうですの。では、お話しますわ。わたくしたち精霊族の歴史を……>


 そうして風の奥方は、話し始めた。

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