第27話  ティエリ山脈の中

<おい、アンナ!? ここから銀の森まで一気に帰れってか!?>


 リカルドが溜息交じりに言った。


「まっ直ぐに帰れば、南西に一直線じゃん」


<ここは、ティエリ山脈のど真ん中だぜ!! 山をどうするんだよ!!>


「風の騎士は馬鹿だな。山より高く飛べば良いだけだろ!! 大山脈を越えろとは言ってないぞ!!」


 この大陸、タナトス大陸には大陸を南北に分断する大山脈があった。

 この山脈は、古来より人の足では越えられぬと言われており、交易も無い。


 <高所恐怖症の相棒は、どーするんだよ!?>


「お前が、しっかりと抱き抱えてれば良いだけだろ!! それから、その相棒って言い方止めろ」


 <なんでだ? お前たち、良いコンビだぞ>


「コンビなら、お前と組んでる」


<俺は精霊だぜ!?>


「ああ、だから精霊の中で一番高位の風の奥方に話を聞きに行くんだ」


 アンナレッタはアントワーヌに別れを告げて、アーロンと共に里の入り口まで戻った。


「風の騎士、力を全開で私を上空に。南西の方向に飛ぶんだ!!」


<ハイハイ>


 リカルドは、アーロンを抱き抱えて飛んだ。

 何も知らされてないアーロンは驚きのあまり、チビったらしい。


 かなりの上空を飛び、銀の森を目指した。

 途中で、不思議な生き物を目にした。

 竜だ。

 最古の生き物とされる竜が、ティエリ山脈で見られた。

 一匹、二匹ではない。

 巣でもあるようだ。

 数十匹の風竜と思われる竜が、山脈の山間を飛んでいた。


「こんな所に、竜の巣があるのか!」


「アンナ様!! これは秘密ですよ!! 誰にも言ったらダメですよ!!」


 アーロンが青い顔をしながらも、アンナレッタに言ってきた。


「人間の冒険者に狙われます。竜の卵は、万病に効くそうですから。

 だから、いにしえは、竜は人ともに生活していましたが、人間が竜の卵を無断で盗んだり、竜を虐げたりしたから、だんだんと人の前から姿を消していったのですよ」


「相変わらず、物知りだな~~」


 アーロンは少し、デヘッと笑った。

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