第26話 アントワーヌの言葉
「生憎、銀の森とか、ロイルの神とか言うものは知らんな」
村人たちに、好奇な目で見られながら、アンナレッタとアーロンは、この里の長のアントワーヌ・バリュの館に招かれた。
他の村人の家は、数百年前の昔の建物のようだが、アントワーヌの家は、10年前にヴァーレン皇国に組み込まれて伯爵の地位を得ているためか、ヴァーレンの貴族の館であった。
「でも精霊は、光の神の眷属だ!!」
アンナレッタは通されたバリュ伯爵家の居間で叫んだ。
アンナレッタの魔力を帯びた叫びは、リカルドにも影響して部屋の中で暴れてしまった。
「アンナ様!!」
アーロンの声で我に返ったアンナレッタである。
アントワーヌはアンナレッタの物凄い力に呆然としていた。
「これが、神の系譜を持つ者の力だというのか」
「すまない、でも、ここは精霊と人間の共存していた幻の桃源郷だ。
イリアス・エル・ロイルを祀る、銀の森の光の神殿が、消失しているんだ。何か分かることは無いか!?」
「イリアスというのは、精霊王の名前だ。だが、彼がこの里にいたという記録はない。精霊と交わった人間の隠れ里なのだ。その精霊族も魔族との戦いのために、皆ここを出て行った。もう、千年以上も前の事だ。後に残ったのは、精霊族と交わった祖先を持つ我らという訳だ』
アントワーヌは言った。
「イリアスが、精霊王だった?」
アンナレッタには、初めての聞いたことだった。
「アーロン、知ってたか!?」
「僕の知ってるのは、聖なる光の神と静寂の闇の神の対立というか、人がイリアスを受け入れることが多くなっていって、闇の神は北の地方に去ってます」
これは、公になっていない事であり、光の神殿も事実は知らないのだろう。
「君の頭の上にいるのは、今の精霊だね?」
アントワーヌが言った。
「そう。こいつは、まだ若い精霊だ」
「精霊が肉体を持っていない……どういう事なんだ」
聞きたいのはこちらである。
アンナレッタは、精霊に肉体がないことに疑問に感じた。
「風の奥方なら、何か知ってるかな」
アンナレッタは独り言ちた。
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