第24話  セレンシア村へ

 ドーリアの王都、アスタナシヤから東北の方向の古王国、ヴァーレンの辺境からティエリ山脈の中の隠れ里の地図をアンナレッタは手に入れることが出来た。


 皇王が、皇族を離れた妹の我儘で、光の神殿の消失という大事態を調べているために、わざわざ西域まで来ている娘に、来るなとは何事だ。と、激怒したらしい。


 三年前に発見されたこの里は、バリュという家が長をしていた。

 そして、東方の神殿には知らせず、バリュ家に伯爵の地位を与えて、ヴァーレンの配下に置いていた。


「こりゃ、地図が無かったら、辿り着くのに何年かかるんだよ~」


 <かなり、奥まった所にあるな~>


 風の騎士のリカルドが、アンナレッタの頭上で言った。


「アンナ、外との接触がほとんどない所に行くのよ。気を付けていくのよ」


「有難う、叔母上」


 いつもは嫌味を言ってくる、ルースティリアだったが、今は兄のアンドレアも失踪してしまっている。

 手掛かりを求めて、旅をするアンナレッタを応援してくれていた。


 念入りにお風呂に入って、厚手の服を用意してもらった。


 出発の日は晴れていた。


「じゃあ、風の騎士。北東に向かって飛んでくれ」


<了解。地図は頭に叩き込んだぜ>


「よし!! 行ってくれ!!」


 アンナレッタが風を捕まえようとしていたら、ドーリア21世がやって来て、


「オイオイ、忘れものだよ」


 そう言って、アーロンを連れて来た。


「それ、邪魔なんで~~ 帰って来るまで、預かっといてください!」


 アンナレッタはそう言って、風に乗ろうとした。


「彼は役に立つよ。これは僕の予見だよ」


 ドーリア21世は笑いながら、片目を閉じた。

 アンナレッタは盛大な溜息をついた。

 そして、暖かそうな服に着替えて、旅支度も用意してもらっていたアーロンは、モジモジしながらドーリア21世の隣にいた。


「ディアルの子よ、君にも関係のある事かも知れない。ロイルの姫を頼む」


 ドーリア21世はアーロンに、そう言った。


 (ディアルの子……?)

 アンナレッタには、聞いたことのない言葉だった。

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