第23話  アーロンの知識

 ヴァーレン皇城への逗留を断られてしまったアンナレッタは、ドーリアの書庫で分かる限りの伝承を集めることにした。

 そのために、数日ドーリアに滞在することにした。


 だがここで、アンナレッタは後悔した。

 嫌味を言われても、ヴァーレンに行くべきだった。


 流石に、建国千二百年の古王国のドーリアである。

 書庫は、占術関係の物が多かった。

 伝承や、古い史実を書いた巻物もあった。


 しかも、現代語のレトア語ではなく、創始の言葉であった。

 読めなかった!!


「リカルド~お前、読めるか~??」


<俺に分かるかよ~>


 「この辺りが古い文献です」

 と言われた書棚だが、そこからどの文献を選べば良いのかも分からなかった。


 書棚の前で、途方に暮れていたら、後ろにアーロンがいた。


「アンナ様」


「なんだ!? アーロン」


「精霊族についての文献なら、目の前にありますよ」


「へっ!?」


 アンナレッタは驚いた。


「創始の言葉が読めるのか!?」


「はい、僕の家では普通に使っています」


「お前の家って、古い神官の家系か何かか!?」


「それは……アンナレッタ様には言えない事です。光の姫、これが精霊族に関する伝承の書いてある巻物です」


「読めんわ!!」


 アンナレッタは、怒りながら言った。


「僕が読みましょう。そこにお座りになって下さい」


 アンナレッタは少し悔しそうに、椅子に座った。


 精霊族と人族が一緒に暮らした村。

 セレンシア村は、ヴァーレンの国を北東に出たティエリ山脈の一角にあり、

 霧に隠されているとあった。

 精霊が、かつては肉体を持ち人間と暮らしていたという。

 その子孫たちが存在したわけだ。

 場所が分からなければ、どうしようもない。


 だが、幸運なことに母の兄の皇王が、セレンシア村の詳しい地図を送ってくれたのだった。


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