第22話  精霊族の存在

「ヴァーレン皇国の僻地に行ってみてはどうかな?」


 ドーリア21世が、アンナレッタに言った。


「何故!?」


「人知を超えた力で消えたならば、人では分からないという事だろう。三年前にヴァーレンで、精霊が人間と交わって暮らしているという、伝説の村の村が発見されたそうだ」


「なるほど、人で分からねば、精霊に知恵を求めるか?」


 アンナレッタは、ドーリア21世に言った。

 ルースティリアよりも、年の近いアンナレッタと話が合うようだ。

 ドーリア21世は、コクンと頷いた。


「とにかく、あなたは良いとしてこの子を休ませてあげなさいな。

 こんな薄着で飛んで来るなんて。すっかり冷えてるわ」


 ルースティリアが、アーロンの事を指して言った。


「勝手に着いて来たんだよ」


 アンナレッタが口を尖らせて言うと、アーロンはシュンとしていた。


「まぁまぁ、今日はゆっくり休まれて、明日行かれるが良い。

 湯の用意もしてありますぞ」


 そして、ドーリア21世はアンナレッタの喜ぶことを言った。

 書庫を貸すと言ってくれたのだ。


「喜んでお借りします!!」


 アンナレッタは湯に浸かって、疲れを取るとパンに肉を挟んだ食事を作ってもらって、ドーリア城の書庫に籠ることにした。

 その前にルースティリアから、どうでも良いことを言われた。


「アンナ、ヴァーレンに来ても、お義姉様の所に行かないようにね」


「ん? 何故!?」


「お義姉様にとっては、あなたは疫病神ですもの」


「どこがだよ~ 妹は丈夫に育ってるし、近衛の騎士とは上手くいってるんだろ?」


「それでもよ。お義姉様にはあなたに、今の幸せを邪魔されたくないのよ」


 アンナレッタは、フ~ムと下を向いた。

 僻地の村の場所のことまで、ドーリア21世は知らなかった。

 民話や伝承にしか出て来ない、幻の村の存在が分かったのはアンナレッタがヴァーレンを離れる当日だった。


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