第20話  叔母のルースティリア

 風には乗れないアーロンは結局、リカルドが抱き抱える形で(アーロンには精霊に触れるという稀有な力があった)空を飛び、ドーリアまでやって来た。


 途中で散々、泣き叫んでいたアーロンも、西域が近づくにつれ、慣れて来たのか大人しくなった。


 ドーリアの王都のアスタナシヤは、海に隣接しているため、微かに潮の匂いがして来た。

 上空から見ると、アスタナシヤの都を南に出ると、広大な砂漠が広がっていた。

 遠目であったが、あちこちに緑のオアシスも見えた。


 王城では、屋上で叔母のルースティリアが手を振っていた。

 アンナレッタは、その近くに着地した。


 叔母、ルースティリアの顔色も悪い。

 なにせ、たった一人の兄が忽然と光の神殿と共に消えたのだ。

 いつもは、嫌味を言ってくる叔母に褒められてしまった。


「さすがは、ロイルの姫ね。風の精霊を使った見事な飛行ですこと」


「そんな事より、叔母上。予見師は何処ですか!?」


 アンナレッタは、ルースティリアの言葉を無視して先を急いだ。

 銀の森に残った神官達から、ドーリアに前もって連絡が入ってるはずだったのだ。

 ルースティリアは、思い切り暗い表情になって、


「ついてらっしゃい」


 その声はとても低かった。


「予見は、陛下が自らして下さってるわ」


「ドーリア21世がですか?」


「ええ、あなたが銀の森を出て、直ぐにこちらに連絡があったわ。

 何があったか、探って欲しいと……」


「何か、分かりましたか!?」


 アンナレッタはルースティリアに詰め寄った。


「落ち着きなさい。アンナ」


「あ、はい……」


「その子は誰?」


 ルースティリアの方が落ち着いていた。


「アーロン・デュロウ。光の神殿で唯一残った神官だ」


「そう、運が良かったのね」


 ルースティリアがチラリとアーロンを見ると、彼は小さくなりながら会釈した。


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