第19話  旅のお供??

「わ~ん!! 助けて~~」


 気持ち良く上空を西風に乗って、進んでいたアンナレッタに悲痛な声が聞こえてきた。


「!? どうした? リカルド?」 


<俺の足に、変なのがぶら下がってる>


 リカルドがふてくされて言った。


「へっ!?」


 よくよく見れば、リカルドの位置がおかしい。

 いつも飛ぶ時は、アンナレッタの上か前方にいた。

 だが何故か、今は下にいる。

 しかも、足を少年神官のアーロンに握られていた。

 半透明の精霊の姿を手で掴めるなど前代未聞の力だ。

 アンナレッタは驚いた。


「アーロン!? 何をやってんだ!?」


「姫を一人で行かせるわけには……ひいぃぃ……」


 アーロンは両手でリカルドの足を握りしめた。


<こら~ 契約者でもないのに、俺に触るなよ~>


「御免なさい……でも、僕高い所は怖くて……御免なさい!!」


<アンナ!! これっ! 振り落として良いか!?>


 堪りかねて、リカルドはアンナレッタに助けを求めた。


「風の騎士、ひとまず着地だ」


<承知>


 こうして二人は着陸した。


「どの辺だ!?」


 アンナレッタはリカルドに問うた。

 リカルドは直ぐに周りの仲間の精霊から情報を得た。


<銀の森を西に出てすぐのヴィスティンの国境の土地らしいな。王都のエラドーラを明日の昼くらいに通過して、ドーリアのアスタナシヤには二日後の昼に着く予定だ>


 アンナレッタは、ひとまず焚き木を熾して、上空ですっかり薄着と恐怖で真っ青になっていたアーロンに、香草茶を入れてやった。


「馬鹿な奴。直ぐに帰るのに危ないことをして」


「嫌な予感がしたんです!! なんだかとても……姫を一人で行かせるべきではない気がして……思わず……精霊殿の足を握ってしまいました」


「そういう力がある奴も稀だぞ。しかも、人の契約精霊を!! いくらドーリアが遠いといっても、五日あれば往復できるだろ!! お前が邪魔しなけりゃな!! もっと早くな!!」


 アンナレッタにガツンと言われてシュンとなったアーロンは、小さな声で、「でも……でも……」と繰り返していた。

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