第18話  旅の始まり

 エル・ロイル家の本家の館には、ロッソとその同僚神官、同じくらいの地位の巫女が集まっていた。

 その中に事件の当事者として、アンナレッタとアーロンも呼ばれていた。


「どうみますか!? この事態を?」


「前代未聞だ。こんなことは!!」


「あの……」


 最年少のアーロンが手を上げた。

 年寄りの神官達がジロリと睨んだ。

 アーロンは、ドキリとして身体を縮こまらせた。

 アンナレッタが、そんな年寄りの神官を制して、アーロンに意見があるなら言ってみろと促した。


「ドーリアの……ドーリアは予見師が多くいる国です。何があったのか、占って視てもらったらどうでしょうか?」


「それだ!!」


 アンナレッタは叫んだ。


「こんな所で、じじいとばばあが顔を突き合わせてても、な~にも解決なんかしないからな!! 早速、行って来るぞ!!」


「アンナ様!!」


 サヤが慌てて制してきたが、アンナレッタはもう決意を固めていた。


「私がドーリアへ行って、光の神殿に何があったのか探って来よう」


「姫!! なりません!!」


 ロッソがたしなめたが、もう遅い。

 アンナレッタは支度のために、自分の部屋に向かって走って行ってしまった。

 一同は唖然とした。

 ロイルの姫の、決断と行動力の速さに、ただただ呆然とした。


 一刻程で、アンナレッタは支度を完了して、神官や巫女の集まっている居間に姿を現した。

 とても軽装だ。

 これから、あんなに長い旅に出るなんて、この時のアンナレッタだって、思っていない。


「ドーリアには、ルースティリア様がおいでですわ。何かあったらルース様からこちらに連絡いただけるようにしておきます」


 サヤが、アンナレッタの嫌いな叔母のルースティリアの事を言って来たので、アンナレッタは少し眉をひそめたが、サヤにはバレなかったらしい。スルーされた。


 光の神殿の魔法陣が消えてるため、風で飛んで行くしか方法がなかった。

 アンナレッタが上を見ると、頭の上でリカルドが顔をしかめていた。


<五年前にあんな目に遭ったのに懲りない奴だな!!>


「あれも経験だ。そしてこれも私の良い経験値になるだろう」


 昼過ぎにそれまでの南風から西風に変わった。

 そうして数名の神官巫女に送られて、アンナレッタはリカルドの起した上昇気流に乗って、ふわりと風に乗って西へと向かったのである。

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