第四章 アンナレッタ、15歳

第14話  退屈な日々

「もっとだ!!もっと高く飛ばせ!!リカルド!!」


 上空で赤茶色の女の子が、はしゃいでいた。


<お前には恥ずかしさとかないのか!?下から見られたらどーするんだよ!!>


「ちゃんと、着てるさ。相変わらず、人間臭いな」


<もと、人間なんだよ。俺は!!>


 この二人、コンビを組んで五年目の魔法使い(精霊使い)のアンレッタと風の精霊、リカルドである。


 五年前に精霊に転生間もないリカルドと契約したのが、エル・ロイル家の一人娘のアンナレッタだった。


 アンナレッタの容貌は、銀色の一族と言われるそれとはかけ離れており、赤茶色のくせ毛、青い瞳は母方の従弟と双子レベルで似ていたくらいだ。

 つまり、アンナレッタの姿は母方の里、ヴァーレンの血が強く出たもので、

 先祖返りといわれる成長の遅さも、エル・ロイル家が神の血の直系だとするような魔法の力においても、アンナレッタはクリアしており、光の神殿は彼女をロイルの姫だと認めていた。


 アンナレッタの力は強大である。

 リカルドがまだ中位の精霊であるから、大した力は使えないがアンナレッタがしようと思えば、火でも水でも大地の精霊でも契約は出来たのだが、神殿はこれ以上の精霊との契約を止めた。


 この時代は、精霊を単体で契約して育てる者の方が多かった。


 時代が進むにつれて、属性の違う精霊と契約をすることになっていくのだが……

 この時はまだ、多くの者が自分の属性を見極めて、精霊と契約していた。


 強大な力は脅威も生む。

 光の神殿は、何人も自分の力に自惚れて、自滅していった魔法使いを見てきた。

 だからこそ、学び舎を作り出来るだけ精霊とのやり取りは、呪文を使わせるように教育している。


 アンナレッタは規格外だった。

 声が魔法を帯びていて、普通の喋り方で精霊と会話が出来る……稀である。


 若いリカルドは、10歳のアンナレッタに迂闊にも名前を言ってしまって、契約されてしまった。

 それから五年、アンナレッタが成長した事といえば、自分との息がだんだんと合って来たことだった。

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