第12話  ヴァーレンにて……

 リカルドは銀色の縄で、誘拐犯を巻き巻きに縛り上げた。

 アンナレッタは、とても満足そうであった。


「よし、このままサヤの所まで、飛ぼう」


<こいつは、どうするんだよ?>


「連れて行くさ。とにかく、サヤに連絡を取らないとな!!

 怒ると怖いんだ。サヤは……」


<お前の方が怖いと思うぜ。>


「何か言ったか!? リカルド?」


 アンナレッタの不気味な笑いにリカルドは、これ以上の言葉を引っ込めた。


 小屋を出ると、サヤの精霊、風のお嬢が噂を集めつつ来ていた。


「あ、お嬢!!」


<アンナ様、ご無事でしたか!?直ぐにここにヴァーレンの騎士隊が参ります。ここでお待ちくださいませ>


「そうなのか?」


 しばらく後、馬に乗ってきた5人ほどの騎士がアンナレッタのもとにやって来た。

 その中に、サヤの姿もあった。


「その者がジョイン・ダルだ。ウィルヴィール皇子は皇城だ。

 そちらは、ロイル家の姫、アンナレッタ様だ。人違いの上にお前たちの犯行は失敗だ。仲間は全て、囚われて取り調べ中だ。ウィルヴィール様を人質にとって、皇家の乗っ取りを企んだようだが、顔を見ただけで、誘拐したのか?」


 騎士に言われて、ジョインという男は、皇子が狩りに出るという情報があったことを言った。


「皇子様が女従者と2人で野宿するなど、有り得ぬ!!」


 騎士に馬鹿にされて、ジョインは落ち込んでいた。


 アンナレッタは、ヴァーレンの騎士に守られて、馬でヴァーレンまで行った。

 そうして、馬で皇城に移動している時に、遠目だったが中庭で遊んでいる男の子を見て愕然とした。


「サヤ、あの子誰!?」


「世継ぎのウィルヴィール様ですよ。現在六歳だそうです。さすがに従弟ですね。アンナ様にソックリですね。」


 そっくりレベルではない!! 双子レベルだ!!

 双子レベルでソックリな男の子が騎士を相手に鬼ごっこをしていた。


 肝心のジオレッタは、少し体調が悪いというだけだった。

 どうやら、正式に父と離婚をしたわけでもないのに、本当に不貞をやらかしたようである。

 近衛の騎士との間に、子供を身籠っていたのだ。

 これで、確実に銀の森に帰って来れなくなった。


 ジオレッタは、アンナレッタの顔を見て驚いていた。

 アンナレッタは、膝を折って母に挨拶をした。


「ご挨拶を申し上げます。母上。私の外見は母上の里方に似たものだと証明されました。この外見は、先祖返りの証……そして、魔法は私がロイル家の者だという事を示しています。長年の憂いが取れました。ここまで来て良かったです」


「アンドレアは、なんと言ってるの!?」


「父上は関係ありません。神殿は私の事をロイルの姫と認めているんです。父上はまだ、母上に心残りがありましたのに。母上が本当に不貞などしなかったら、父上は迎えに来たでしょうに……」


 アンナレッタの言葉にジオレッタは腹に手を当てた。






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