第16話 星空を眺めて思うのは……
こんなに話したのは、子供の時以来かもしれない。
実は私とユーシスは幼馴染。
だから私はよく城を抜け出しては、ユーシスが当時暮らしていた居住区に遊びに行ったりしていた覚えがある。
「ねぇ、ユーシス昔よく遊んだよね。たくさん楽しいこともしたし、悪いこともしたしで怒られてばっかりだったっけ」
「ああ、確かにそんなこともあったな。でもあの時俺達だけじゃなくて、もう一人いただろ。ほらあの子、ええとなんて言ったけ……あ、そうだ! シスって名前の子」
「いたわね、それで三人で色々やったわね。近くの林で秘密基地作ったり」
「でもシスってあの後どこ行ったんだ。ほら家の事情でもう会えないとか言って泣きながら別れただろ」
「うん……商家の娘だったみたいだけど、きっとあの子なら大丈夫よ。でも頭がいいからてっきり年上だと思っていたのに、まさか年下だとは思わなかったけどね」
「ははっ、確かにそうだったな。姫のことを気に入ったのか、ずっとくっついてたもんな」
「あ、ごめんねネムの知らない話ばっかりして」
「………………」
私がネムの方向に顔を向けると、どうやら眠っているみたいだ。
甲冑を外さずに寝るなんて――うん、待てよ。今ここで甲冑を取ったらネムの顔が拝めるかも。やっぱり顔には歴戦の傷みたいなもの付いているのかな。
やっぱりやめておこう。
ネムの信頼を裏切ることになるし、でも話ぐらいなら。
「ユーシス、ネムの顔って」
「俺は見たことないけど。でもな、この際だから言っておくけど、もしかしたらとんでも人物かもしれん」
「なんでそう思うの?」
「いやそのな、あいつ色々とバケモンなんだよ。剣術は並外れてるし、魔術に関しても申し分ないと賢者様からお墨付きみたいだしな。ホントなにもんなんだろうな」
「さぁ……私も分からないから聞いてるんだけど」
「あと皆が言うんだよ。あいつと対峙するとなぜか足が震えるって。そして気づいた時にはあいつを前にして跪いてるってな」
「何それ、恐い」
ネムってそんなに凄いの?
まあ、実際王族に仕える従者って個々の能力によって選ばれるみたいだし、不思議ではないのかな。
でもシスティアって従者がいなかった気が……いや私が見かけたことないだけで、常日頃から側にいるのかな。
でも私の部屋に来た時も、独りで来たし。
今はそんなこと考えても仕方ないか……私は私のやるべきことをやるだけ。
きっと二人も支えてくれるはず。
そんな二人の期待に答えなくちゃ。
「じゃあ私もそろそろ寝ようかな」
「そ、そうか……寝るのか。俺はネムから見張りを任されてるからもう少し起きとくよ」
「そう、いつもありがとうね。ユーシス」
「お、おう」
ユーシスは照れた様子で少し頼りない返事をした。
そのまま私は羽織っていたマントを脱いだ後、地面に横になる。
夜空に浮かんでいるのは満点の星空。
まるで手が届きそうなほど近く鮮明に見えている。
私は改めて実感した。
この世界はとてもとても広いのだと。
こんな星空みたいに澄んでなにひとつ穢れもない綺麗な世の中になったらいいのにと……。
私は星空が見守る中、ゆっくりと眠りについた。
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