第6話 才ある者がゆえに
彼女の名はシスティア・ラルフハルト。
年齢は15、現王妃であるセレスの娘である。
この歳にして彼女はセレスから執務を一任され、その類稀なる才で第二王女としての評価も高い。
しかしそんな彼女にとってはこの生活が息苦しくてならない。退屈で仕方がないのだ。
(はぁ……お姉さま部屋から一向に出て来ませんね)
システィアは姉であるリーゼより優秀である。
それに容姿端麗も重なり、男性陣が振り返るほどの美人なのだ。
(わたしに何一つ勝てないお姉さま、ああ可哀想に……)
システィアにとっては、義姉であるリーゼが可愛く見えて仕方がないのだ。それもこれも自分が優秀であるがゆえに抱いた感情なのだが……それとはまた違った感情あって……。
「さて今日はどういったお遊びをしようかしら」
侍女への教育?
それとも騎士団の皆に剣術の稽古?
システィアにとって周囲の人間など玩具でしかないのだ。母親であるセレスもその一人である。
だが唯一、リーゼに対しての認識は違う。それは自身には備わっていない能力を持ち合わせているからだ。人を引き寄せ、信頼を得るそんな不思議な力を。
だからこそリーゼからは目が離せないのだ。
そんなこんな考えながら、自室を後にしたシスティア。そして向かうは、セレスがいる執務室。
その執務室で猿でもこなせる単純な作業を手伝いに行くのだ。セレスが押印をした書類を、各名家や商家ごとに分ける。
以前、書類をチラ見した程度だが、書かれている内容はたいした物でないのは確かだ。
「さて執務室に着いたことですし、表情を変えなければ……ふふっ、これで問題ありません」
意識的に普段の表情から、作り笑顔へ変えた。
セレスも偉そうに言う割には、たいしたことない人間。父親である国王に至っても優柔不断で、自分の意見を持たない
そんな相手に時間を割くのは無駄でしかない。
何に対しても縦に首を振る。
適当に返事を返せば良い。
わざわざ相手にする必要性なし、とシスティアは判断しているのだ。
「では、そろそろ執務室に……ん? お母さまともう一人誰かの気配」
執務室の扉が少し開いた状態で中を覗き見た。
そこにはセレスと顔までは見えない、が騎士団の鎧を着用している誰かだ。胸の辺りにこの国を象徴する金色の鷲が描かれている。
(誰なのでしょうか? あの男性は?)
セレスはかなりの遊び人だ。
王妃の特権を利用しては、部屋に男を呼んで毎日、毎日夜の営みでもしているに違いない。
「やっぱり、艶めかしいものですね。口づけというのは。お姉さまも誰かとしたことはあるのかしら? まあいいわ、それより……」
システィアが覗き見しているとも知らずに2人は激しく唇を重ね合う。それはもう艶めかしいものでシスティアは目を開いては閉じたりを繰り返していた。天才とは言ってもまだまだ年頃の娘。
(ここでわたしが入るのも一興かしら)
焦った二人がどんな顔をするのか楽しみでならないのだ。しかしその場合のリスクも考えなければならない。
セレスは今の身分に満足しているはずだ。ということは口止めをするため、システィアを始末する可能性も考えられるということ。
(なら、この状況をどう利用すべきか……)
国王に口添えをしておくのもアリ。
証拠は幾らでも用意できるだろう。厄介なのは男の顔までが見えないということだ。
だとするならばリーゼにも動いてもらう他ない、そうシスティアは考えた。
リーゼが少しばかり苦しい思いをすることにはなる。しかし彼女の従者達が命懸けでことの対応に当たるはず。
(ふふっ、さて、楽しい楽しい劇場型反逆の幕開けです。せいぜい皆様、わたしの掌で踊ってくださいませ)
システィアは不敵な笑みを浮かべるのだった。
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